俳優吉田鋼太郎(57)が、今年5月に亡くなった演出家蜷川幸雄さん(享年80)の後を継いで「彩の国シェークスピア・シリーズ」(さいたま芸術劇場)の芸術監督に就任し、15日、都内で会見を行った。同シリーズはシェークスピアの戯曲全37作の上演を目指し、98年にスタート。これまでに32作を上演し、34万人を動員した。吉田は2代目芸術監督として、残る5作品を手がける。

 吉田は同シリーズ第13弾「タイタス・アンドロニカス」に主演するなど計12作に出演。蜷川さんも信頼を寄せ、10年前から蜷川さんの依頼で小栗旬など若手俳優の演技指導も行ってきた。亡くなる1カ月前の4月、蜷川さんが病室で関係者に「鋼太郎が若手俳優の面倒をみてくれるのを含めて、残りをやってくれれば安心だ」と残した遺言を受け、就任が決まった。

 吉田は「受け継いだ蜷川さんの血と僕の血の両方を融合させて、演出できれば」と意気込んだ。吉田芸術監督の第1弾は来年12月に自ら演出・主演する「アテネのタイモン」で、キャストは「蜷川さんのもとで演じた役者を起用したい」。年1作のペースで上演し、全37作上演を達成後、生前の蜷川さんが構想した吉田主演「テンペスト」を上演するという。吉田は「蜷川さんはやりたくないものばかり残した」とこぼしながら、「逆に燃える。シェークスピアをやってきた人間としては、『蜷川さんならこうするだろう』というものと、『自分ならこうする』というものを入れて、新しいものを作りたい」と話した。