【第57回】
悩みを認め表現する
薬物依存症(4)
長崎市の西脇病院は、依存症の治療プログラムを持つことで知られる病院だ。この病院では毎週火曜日の夜に「夜間集会」と呼ばれる、依存症からの回復者が自分たちの体験を語るミーティングが行われている。
覚せい剤依存症からの回復者Kさん(22)はこう体験を話した。「初めから覚せい剤にいったんではなくて…、高校生ごろはシンナーですね。シンナーは流行みたいなもので、17〜18歳までにはほとんどの仲間がやめるんですね。高校を出てもやめられないヤツは『あいつは意思が弱い』ってバカにされる。熊本の方で就職したんですが、性格的にとても気が小さくて、イライラして何でも心配して、仕事はきちんと完ぺきに準備しとかないと気が済まないようなところがあって、行き詰まっていました。19歳のころ、彼女にもふられたんです。誰かにつらさを相談できれば良かったんでしょうけど、格好をつけて平気なふりをしていた。見かねた友人が思いやりで…というか、そう思いたいんですけど、覚せい剤をくれたんですね…」。
「依存症にはまる人たちには、人のためになって、自分のためにならん生き方をする、いわゆるいい人が多いのですよ」と苦笑するのは、この夜間集会の司会者でもある院長の西脇健三郎医師だ。思春期で依存症になる人は、人に気兼ねをしたり、親にもノーと言えずにいたり、本当の自分を出せないような人が多い。融通が利かないことも多く、対人関係でストレスを抱え込んでしまう。ストレスによって心身症になる子どももいれば、うつ病になる子も、依存症になる子もいるが、その根は同じだという。
「依存症になる人は、何かに依存することで自分の生きづらさを表現しているわけです。依存することでバランスを取ろうとしてきた人が、それまでのやり方を改め、回復するためには、自分の生きづらさを認めることがまず重要です。そのためにも、自分の生きづらさを言葉にすること、正直な気持ちを、自分と同じ悩みを抱えた仲間の前で表現するミーティングを、継続して行うことが有効なのです」。西脇院長は依存症からの回復の仕組みをこう説明する。
【ジャーナリスト 月崎時央】
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