
| | 内容:動物園でライオンとにらめっこ |
| 目的:猛獣を威嚇。逃げ腰にならない |
| 効果:△ライオンが相手にしない |

| | 内容:沖縄でハブ対マングースを観戦 |
| 目的:タックルのタイミングをつかむ |
| 効果:○技術的イメージトレ |

| | 内容:自衛隊パラシュートで降下訓練 |
| 目的:11メートルの高度で恐怖心を克服する |
| 効果:○どんな状況にも対処 |

| | 内容:利き手と反対の手を使い尻をふく |
| 目的:左右の技を取得して幅を広げる |
| 効果:◎敵への対処法増える |

| | 内容:夢の中でも絶対試合に負けない |
| 目的:成功イメージをつくり植え付ける |
| 効果:◎勝利のイメージ重要 |

| | 内容:不本意な試合後局部の毛をそる |
| 目的:裸になるたび悔しさを思い出させる |
| 効果:○エネルギーに変える |
さあ、アテネ五輪イヤーだ。04年8月13日の開幕まで226日。金メダルを狙う選手たちは、年末年始ものんびりしてはいられない。年越し合宿も当たり前。男女合計で金5個を最低ラインに掲げるレスリングは、30日から茨城・大洗町で男女合同合宿に突入した。元日朝の寒中水泳では浜口京子(25=ジャパンビバレッジ)ら選手、コーチだけでなく、福田富昭日本協会会長(62)も鹿島灘の荒海で気合を入れる。科学的トレーニングが浸透しつつあるスポーツ界で、理屈を超えた精神世界も依然重視されている。
五輪イヤー幕開けに、アテネの日本選手団総監督を務める福田会長が寒中水泳の率先垂範を明らかにした。「当然、私も泳ぎますよ。そうでないと選手に示しがつかない」。元気満々の62歳は言い放った。日本レスリング協会は4年に1度、五輪開催年の恒例行事として代表候補の年越し合宿を行っている。今回は初めて女子も参加。30日から新年5日までスパーリングに励み、元日の朝には36選手と監督、コーチ、幹部が鹿島灘の荒海に飛び込む。
過去にも薄氷が張った川で泳いだり、合宿地に海や川がない場合は消防用ホースで水を掛けるなど、非日常的体験を通して精神面を鍛える試練が与えられてきた。今年就任した福田会長は、日本レスリングの父と呼ばれる故八田一朗会長の厳しい教えの継承者。「夢の中でも勝て」「ライオンとにらめっこ」などユニークな強化法でお家芸をはぐくんだ八田イズムは脈々と生きている。今夏の世界選手権前には88年ソウル五輪以来の長期合宿を導入。福田イズムという言葉も誕生した。
五輪で20個の金メダルを獲得してきたレスリング界では、依然として根性論や精神論が幅を利かせている。ロス五輪金メダリストの富山英明男子強化委員長は「格闘技には非科学の部分がある。理屈じゃない。練習の質もあるが、量をこなさないと勝てない。限界を超えて命をかけないとだめだ」と極限に耐えうる肉体的精神的強さを目指す。
一方で根性論と対極をなす科学的メンタルトレーニングの研究は84年ロス五輪後、飛躍的進歩を遂げている。ハングリーさが高いモチベーションとなった昭和20〜40年代から社会状況は一変し、不自由なく育った現代っ子に対する指導法も変化した。緊張をほぐしたり集中力を高める「心の強化法」が確立され、柔道や陸上など主要競技団体で実施されている。
レスリング界の常識は、世の流れと逆行する部分がある面は否定できない。実際に女子のエース浜口は「本当に泳ぐんですか?」と顔をこわばらせ、63キロ級伊調馨は「正月合宿自体が信じられない」と戸惑いを見せた。東海大でスポーツ心理学を教える高妻容一助教授は「何のために泳ぐのか、それによってどのような利があるのか。指導者が明確に説明して選手が納得して初めて、効果が期待できる」と説く。理論や理屈を超えたトレーニングの有効化には、選手の理解が不可欠。「協会が考えたことはすべてプラスになると信じてやる」。浜口は最終的に前向きにとらえた。レスリング界には独特のメンタル訓練を受け入れる土壌が残っている。【岡山俊明】
◆他競技の年越し合宿 陸上長距離の渋井陽子、土佐礼子(ともに三井住友海上)は中国・昆明で勝負の年にかける。トライアスロンは代表候補8人が沖縄・石垣島に集結し、26日から1月14日まで実施。大みそか、元日も休みはない。都内で合宿中の競泳陣は31日に1度解散し、1月2日に再集合する。レスリングと並びメダル量産が期待される柔道は、個々で調整。代表争いが激しい男子66キロ級鳥居智男(了徳寺学園職)は「食う、寝る、柔道」。東海大道場で新年を迎える。
◆ユニークトレ 故八田会長考案のトレーニングは破天荒なものばかりだが、福田会長は「今考えても合理的で科学的。何より愛があった」と述懐する。「夢の中でも勝て」などは、成功イメージをつくる意味で効果は大きい。「ライオンとにらめっこ」は選手たちも当惑したが、レスリングに役立つと信じることがプラスに作用した。
20年遅れた科学的トレ
日本の「脱ど根性」は欧米から20年遅れた。精神力を科学的に強化する研究は193
0年代に旧ソ連で始まり、60年代から米国、オーストラリアでもスタート。日本では64年東京五輪の際に「(極度の緊張による)あがり」の研究が行われ、85年からスポーツ心理学者によるメンタルマネジメントが本格的に開始された。
国立スポーツ科学センター(JISS)スポーツ科学部研究員の菅生貴之氏は、個別面談を通じて競技者の心理サポートを行っている。カウンセリングで心の奥底に眠るものを探り出し、メンタルトレーニングによって「不安感の上にふたをする」。試合になると緊張で力を出せない。そんな悩みを、訓練によって解決する。「集中」と口に出すことで気持ちを切り替えたり、目線を上げる、腹式呼吸で落ち着かせるなど、緊張感を解き放つ方法論を伝授する。日大ゴルフ部時代にプレッシャーに悩んだ菅生氏自身も、今では普段の力を発揮できるようになったという。レスリング年越し合宿については「やらされているのでは進歩はない。目的と効果の理解が大事」と指摘した。
メンタルトレーニングはあくまで持てる能力を最大限に生かすための補助的手段。日々の技術向上が何より大事なのは言うまでもない。(スポーツメンタルトレーニングの講習会等は日本スポーツ心理学会HP、http://wwwsoc.nii.ac.jp/jssp2/で紹介)
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