世界選手権の団体銀メダリストで、昨季限りで引退した植松鉱治(29)がリオ五輪男子団体決勝を分析した。

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 本当にうれしいですね。3月まで同僚として身近に見ていましたから、メンバーの表情を見ていたら「よかったな」と感動しました。

 実は4種目目の平行棒、第1演技者のところで金メダルを確信しました。田中佑典選手が序盤にヤマムロ(棒下マクーツ)という技を成功させたんですが、あそこを乗り切ったところで「いける!」と思いました。ここで着地も決めて15・900点。後で自分で言っていた通り、予選のことはふっ切れた演技でした。

 最初の山室選手のあん馬は、あんなところで失敗するのは見たことがないですね。緊張していたんでしょう。でもそこから徐々にほぐれてきて、自信が出てきた。2種目目のつり輪までは点があまり出ないことは想定通り。3種目目の跳馬で全員が決めて流れが良くなりました。

 内村選手の鉄棒は「安全運転」でした。予選で落下しているだけに、離れ技は落ちないことを優先して近くでバーを持てるようにしていましたね。状況を判断してそういう修正ができるからこそ「絶対王者」なんでしょう。

 修正といえば、白井選手にも驚かされました。最終演技の床運動。予選で感じていた床の跳ね具合の違和感を完全に吸収して見事な演技でした。本番会場の床は練習会場と違って土台に乗っているので、かなり跳ね方も変わってきます。予選で調整仕切れなかった部分をしっかりと合わせてきた。若いのに修正力は素晴らしいです。

 昨晩は眠れなくて午前2時半に起きてしまいました。前回ロンドンでは現地で見ましたが、選手生活を終えて初めて見る五輪は、純粋にドキドキ感を楽しみました。この後も期待しています。

 ◆植松鉱治(うえまつ・こうじ)1986年(昭61)8月30日、大阪府松原市生まれ。松原七中、清風高を経て仙台大進学。4年時の2008年全日本学生選手権個人総合で内村を抑えて優勝。コナミでも「鉄棒のスペシャリスト」として活躍。2010年世界選手権では日本の団体銀メダルに貢献。2013年全日本選手権の鉄棒で優勝。昨季限りで現役を引退した。