世界選手権の団体銀メダリストで、昨季限りで引退した植松鉱治氏(29)が、元同僚の内村航平(27=コナミスポーツ)の金メダル演技を解説した。

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 内村選手の精神力には驚くしかありません。1位とは1点近く差をつけられて、完璧な演技が求められる最終種目の鉄棒で、15・800点。本当に鳥肌が立つほどの見事なできでした。

 逆転された2位ベルニャエフ選手の鉄棒の得点が低いと思っている人もいるかもしれませんが、妥当だと思います。

鉄棒の両者の得点は、

 内村15・800=Dスコア7・1+Eスコア8・7

 ベルニャエフ14・800=Dスコア6・5+Eスコア8・3

 (Dスコア=演技価値点、Eスコア=実施点。10点から減点)

 ベルニャエフに減点対象のミスはいくつも見られました。ひねり技の後に逆手でバーを持ったときの角度が低かったり、離れ技のあとの大車輪にいくときに肘が大きく曲がっていたりしました。着地も大きく前に出ていますから、これも減点対象。すべてうまくいっても15・1~15・2点の構成ですから、あの演技で14・8点は問題ないスコアです。

 内村選手はつり輪の得点が少し出なかったかなと感じました。E難度を8・533とされたんですが、8・7ぐらいはあると思います。それと平行棒では着地が前に1歩出ましたが、あれは練習ではめったに見られないミス。着地を「止めてやろう」と狙いすぎた結果です。

 ただ、気合が入りまくっていた団体総合決勝に比べればフラットな集中状態だったように思えました。自分の演技のことだけを考えて、普段通りの内村選手でした。

 団体決勝が終わって、リオの内村選手から「何とか踏ん張りました」と連絡がありました。本当にすごい男です。2連覇おめでとう!

 ◆植松鉱治(うえまつ・こうじ)1986年(昭61)8月30日、大阪府松原市生まれ。松原七中、清風高を経て仙台大進学。4年時の2008年全日本学生選手権個人総合で内村を抑えて優勝。コナミでも「鉄棒のスペシャリスト」として活躍。2010年世界選手権では日本の団体銀メダルに貢献。2013年全日本選手権の鉄棒で優勝。昨季限りで現役を引退した。