<リオ五輪:柔道>◇10日◇男子90キロ級、女子70キロ級

 ベイカー選手には持ち前のパワーに戦略が備わっていた。以前は力でねじ伏せる柔道で、力負けすれば思うような結果は出なかった。今年に入り、力の自己コントロールができ、試合時間5分内での流れを作ろうとしていると感じる。今まで組み手も、つかまれたら切って、切って、自分の形に持っていっていたが、今日は「そんなに受けて大丈夫かな」と思うくらい。

 持たせても平気なのだろう。それにより無駄な力を使わない。ずっと力を込めたら1日5試合も戦えない。5分間をやり過ごすことができる戦略が必要で、力だけでは限界がある。ベイカー選手は若くしてそれを体得しているのだろう。

 田知本選手は彼女を支えた方々の力を感じた。もともと過剰に重圧を自分に与えてしまうタイプ。不安な方に自分を持っていく。今日は初戦から動きは硬く、技が出なかった。ただ、支援した人々への思いが踏ん張らせた。金メダルをなんとしても持って帰るという背景が彼女の柔道から見えるようだった。(92年バルセロナ五輪金メダル)