喫煙所でたばこを吸っているとスペイン人記者に聞かれた。「本当に来るの?」。14日の男子100メートル決勝。ゴールから1時間経過しても、新聞の取材エリアにボルトが来ない。心配そうな相手に「大丈夫。必ず来るよ」と答えて、2人でゆっくりたばこを吸った。

 「世界最速の男」の言葉は世界中の報道機関が欲している。本人もそれを理解し、可能な限り質問に答える。過去に世界選手権を2度取材したが、テレビ取材エリアを抜けるまで1時間はざら。ボルトは何度も立ち止まって、同じ質問をされても、根気強く答える。

 この日は午後10時25分にゴールして、最後のメダリスト会見を終えたのは深夜0時42分。しかもこの時、まだ2種目を残していた。レースは10秒弱、報道対応は2時間17分。その姿を見ると最近流行の「神対応」という言葉、簡単には使いづらいなあ。【益田一弘】