東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長(78)が9日、五輪閉幕一夜明けの報道対応を都内で行い、大会のレガシー(遺産)について考えを述べた。

「これは当初、全く予期していなかったこと」として新型コロナウイルスの感染拡大を挙げ「今後もパンデミックは起こり得る。その中で『世界的な規模のイベント開催が可能である』と東京大会が示した。これこそレガシーと言えるのではないか」との見方を示した。

また、コロナ感染拡大前からサステナビリティー(持続可能性)やダイバーシティー&インクルージョン(多様性と調和)を掲げてきた中、二酸化炭素の排出量をゼロにする調整や聖火に水素ガスを使ったことを「1つの象徴」と紹介。都市鉱山の廃棄物を再利用したメダルや、廃プラスチックを活用した表彰台などを例に挙げた。

続けて「多様性については(森喜朗前会長の女性蔑視発言による辞任など)途中、課題というか、問題もあって反省すべき点があった。その後はジェンダー平等へ一定の配慮をしてきた」。かねて取り組んできた女性アスリート比率の増加や、橋本聖子会長の就任以降は女性理事のパーセンテージも大きく向上した。障がい者に向けた取り組みも重ねてきた。「インクルージョンという言葉を誰も分からなかったころから考えると」大きな進歩だったと強調した。

一方で「グローバルな視点では(3月に)海外観客の受け入れを断念したことで広がりがなかった」とも残念がった。

「復興五輪」については「被災地を念頭に考えてきた。野球・スポーツを最初に福島へ持っていったし、仮設住宅のアルミサッシの再利用もした。被災地の子供たちに参加もしてもらった。コンセプトを十分に実現できたかと言えば100%ではなく課題もあると思うが、被災地が復興しているという事実も、今後も伝えていきたい」と語った。【木下淳】