東京五輪が終わって1カ月、パラリンピックが終わって1週間たった。スポーツ庁の室伏広治長官は10日に会見し、日本選手団の活躍をねぎらい「スポーツが持つ価値を多くの国民に伝えたと思っている」と振り返った。確かに、日本中が沸く場面は五輪、パラリンピックともに多かった。

獲得した金メダル数は、五輪が27個、パラは13個。五輪30、パラ20という目標こそ下回ったが、五輪は世界3位という目標を達成。パラも前回リオ大会の0個から大躍進を遂げた。成績的にも大成功だった。

もっとも、個々の選手や競技でみると、結果もさまざまだ。スポーツ庁は東京大会に向けて「重点支援競技」を決めた。直近の五輪や世界選手権の成績、各競技団体の強化プランや達成度などから重点的に支援する競技を設定。強化費の増額など支援をしてきた。

五輪で強化費が3割増額となるSランクには柔道、水泳、体操、レスリングの「ご四家」など10競技。2割増額のAランクには卓球やソフトボールなど6競技が入った。パラは区分なく10競技が指定された。

Sランクではバドミントン、陸上などが金を逃したが、全競技がメダル獲得。Aランクもセーリング、テニス、バレーボール以外はメダルを獲得した。パラもメダルを逃したのはアーチェリーだけ。水泳と陸上、バドミントンが大量のメダルを獲得するなど、重点支援強化が成果をみせた。

ただ、期待されながら結果を残せなかった競技、選手がいたのも事実。室伏長官は「自分の立ち位置を見誤ったうまくいかなかった競技もあった。情報戦略が大切」と話した。1年延期の上に世界的に大会が開催されず、情報が入りにくかった面もあった。しかし、だからこそ情報が重要だったのかもしれない。

スポーツ庁は今月から各競技団体とのミーティングを始めるという。特に、期待に応えられなかった競技は、しっかりと総括することが大切になる。「重点支援」で多額の公費が強化に使われている。「選手は精いっぱいやった」で終わるのではなく、原因を分析することが次につながる。

日本トライアスロン連合(JTU)は、早くも8日に理事会を開催して五輪とパラを総括。パリ大会への戦略を話し合った。午後1時からの会議は5時間を超えた。五輪は目標に届かなかったが、男子が実力を伸ばしたナショナルチーム体制を男女とも強化してパリを目指すことを決めた。パラも含めて早くも具体的なプランがスタートする。

東京大会の1年延期で、次のパリ大会まで3年しかない。わずか3年、いつもの「4年間隔」とはまったく違う。競技によっては2年前の来年から予選大会が始まる。東京大会の余韻に浸っている時間はない。今大会の好成績をパリへつなげるために、戦いはもう始まっている。【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIのOh! Olympic」)