東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会関係者から裏話を聞く中で、印象に残ったことがいくつかある。例えば水際対策だ。大会組織委員会、政府関係者らが一体となって取り組んだ。海外選手の空港内での移動について、動線やルールも日々変わったという。ある大会関係者は「バタバタぶりはある意味で戦場でした」と振り返った。

関係者によると、空港のコロナ検査で、濃厚接触者の疑いがあると特定された中南米選手がいた。選手は何食わぬ顔でしれっと選手団の中に戻り、入国審査をくぐり抜けようとしたという。関係者は「もちろんすぐに確保しましたが、まさかルール破りをするなんて」とため息をついた。

空港内の待機場所では、選手同士で荷物の中にある複数の酒瓶を見せ合い、盛り上がる姿を毎日のように見たという。関係者は「だいたい大量に持っているので、本当に1人で飲むためのものだったのかと疑ってしまいますよ。選手村内では、複数での飲酒が横行しているとのウワサも聞きましたし」と首をかしげた。

別の大会関係者は陽性者や濃厚接触者の疑いがある選手を特定したり、陽性者を検疫に連れて行く役目を担った。「税関担当者は防じんマスクにガウン着用と万全なコロナ対策でしたが、私たちは普通のマスクだけ。丸腰ですよ」。さらに「コロナ感染するかもしれないとずっと怖かった。トップは繰り返し『安心安全』と言うけど、水際対策を担う我々に安心安全はなかったです」と振り返った。

“丸腰”で対応していた関係者は、東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長や丸川珠代五輪相らトップの発言に複雑な気持ちをのぞかせた。「『大会が成功したかどうかは歴史が証明してくれる』『職員も頑張ってくれた』とか、簡単に大会を総括されても、個人的にも心の整理がつかないですよ。トップには説明責任があるんだから」。

今後は経費分担が焦点だ。国民はもちろん、水際で体を張った大会関係者のためにも、まず組織委が大会運営についてしっかりと説明責任を果たしてほしい。【近藤由美子】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)