次元の違うパフォーマンスを見せて、浜野淳(40=山陽)が3年ぶり5回目のG1タイトルを奪取した。スタート6番手からけた違いの足で追い上げ、5周1コーナーで先頭。後続をぶっちぎり圧勝した。トップ選手を置き去りにした走りで、12年ぶりのSG制覇を完全に視界に入れた。

 今だ! 5周1角、前を走る高橋義弘が射程圏に入った瞬間、浜野は迷わず内側に切り込む。スタンド前の走路で抵抗する暇さえ与えない。今までに感じたことのない力強い追い足に、熱風さえ心地よく感じる。ゴールまではまさに独走。熱走路の川口の舞台は、3番車だけのためにあった。

 「やばい!」。スタートダッシュに失敗し、6番手に置かれた。しかし、焦りを封印して冷静に追い始めた。実績のあるタイヤで臨んだ勝負の一戦。エンジンとの相性は予想以上で、追いが難しい熱走路でも流れるようにスピードに乗った。「立ち上がりが抜群だし、試走での走りが全然違った」。圧巻の追い込みを「20年やってて、こんなメンバーを抜くのは初めて。あれ、あれ! いいのかな、って感じ」と振り返った。

 優勝戦ではタイヤ効果があったものの、今節の調整は見事だった。「思い切って夏の仕上げにした」。その源にあったのは、考えられる方法にすべてチャレンジした昨年の取り組みだ。「去年、何のために一生懸命やったか分からなくなる。今節はもがきたい」と語っていた通り、1ミリ単位の仕上げに取り組んだ。「昨日までの自分を褒めてあげたい」と冗談交じりに本音を漏らした。

 12年スピード王決定戦以来のG1表彰式。ぼくとつな人柄もあって、しぐさがぎこちない。司会者から「もうちょっと笑いましょうよ」と促されるシーンも。「本当にうれしい。怖いぐらいうまくいった。放心状態です」。不運な出来事もあって伸び悩んだ時期もあったが、乗り越えた。今あるのは向上心のみ。「整備力がまだまだ」。次のターゲットは03年全日本選抜以来となる、12年ぶりのSGタイトルだ。【天野保彦】

 ◆浜野淳(はまの・じゅん)1975年(昭50)6月25日、福岡県生まれ。山陽所属の24期生。全国ランク10位。SG優勝は01年オールスター、02年日本選手権、03年全日本選抜。G1とG2各5回、G3は1回優勝。通算優勝32回。1着593回。趣味はゴルフ。166センチ、57キロ。血液型O。