18年W杯ロシア大会アジア最終予選の9月シリーズは、審判問題で揺れた。初戦のUAE戦(1日、埼玉)でゴール判定を巡る誤審で、日本はホームで勝ち点を落とした。続くタイ戦(6日)前には「初戦のカタール人に続いて今度は主審がイラン人で、また中東の笛だ。あの主審は過去に日本に不利な笛を吹いた」といった声も一部で上がり、神経をとがらせた。

 ある日本サッカー協会幹部は言う。「今はアジア全体のレベルが上がっている。簡単にW杯にいけると思ったら、足をすくわれる」。私はその意見にうなずきながらも、警戒の意味を込めて言ったものと認識している。協会幹部だけでなく、サッカーにかかわる人たちも、同じ意見を言う人は多い。4年前も8年前もW杯予選が始まると、同じことを言い出す人が必ずいたが、日本は早々と勝ち進み、タイミング的には世界最速でW杯出場を決めている。

 しかしW杯本大会になれば、アジア勢は世界の壁にことごとく跳ね返されている。とてもアジアのレベルが上がったとは思えない。W杯本大会の組み合わせ抽選の段階で、アジア勢が入った組の他大陸の国は、ラッキーな気持ちになるだろう。まず確実に1勝が計算できるからだ。しかしそう思っていても、その国の監督らは「アジアのレベルが上がったから簡単には勝てない」と口にする。

 日本サッカー界は10年以上前から「脱アジア」を目標に、世界トップ10入りを目指した。しかし世界との差は縮まらない。逆に、他のアジア諸国に脅かされるのが現状だ。協会幹部が言っていた「足をすくわれる」は現実のものになっているのかもしれない。

 9月シリーズが終わり、ある先輩から電話をもらった。「あの判定はひどいね。得点になってたら、その勢いで日本が逆転できただろうな。最低でも引き分けだね」。私はすかさず言い返した。「仮にあれがゴールに認定されて、2-2になっていたら、日本はさらに失点して2-3で負けたでしょう。2-1から明らかにUAEは攻撃を仕掛けなくなりましたからね。負けたことを審判のせいにしてちゃいけませんよ」。

 世界には追いつけず、他のアジア諸国からは突き上げられるのが現状なら、サッカー協会の責任は重い。「アジアのレベルが上がった」と、幹部が軽々しくコメントしてほしくない。アジアの他の国が迫ってくる時、日本は何をしていたの? バルサもレアルも格下相手に負けることはある。今回の1敗は、それであってほしいし、もしそうでなければ、しかるべき人が重い責任を取るべきだろう。【盧載鎭】

 ◆盧載鎭(ノ・ゼジン)1968年9月8日、ソウル生まれ。96年入社し、主にサッカー担当。学生時代、焼き肉店でバイトした経験があり、包丁さばきは天下一品。牛バラを部位別にばらすこともできます。テコンドー有段者だが、ケンカはしません(笑い)。最近、次女(中1)がフェンシングのエペ種目で全日本選手権出場(12月1日~、駒沢体育館)を決め、幸せな気分。2児のパパ。