新年度が始まった。新入生、新社会人のみなさん、おめでとうございます。4月になり新たなスタートを切った人も多いでしょう。

 既にシーズンが始まっているJリーグだが、新年度が始まった4月1日、G大阪に新たなスタートを切った選手がいる。元日本代表DF丹羽大輝(31)だ。アウェー新潟戦でACLを含めて今季公式戦初出場。後半42分からだったが、勝ち越しに成功し3-2となってから右ウイングバックとして出場し、残り時間を守りきった。

 15年はJ1で全34試合に出場。昨季は負傷もあったが28試合出場と、不動のセンターバック(CB)だった。しかし、今季はDF三浦とファビオのCBコンビが加入し、公式戦8試合を終えた時点で出番はなかった。丹羽は恐らくJ屈指の「ポジティブ思考」の持ち主。それでも、自分の境遇をどう考えていたのか。翌2日、本人に聞いてみた。

 「楽しいですよ。この年齢になって、こういう経験ができると思っていなかった。今、試合に出られていない状況で、どうやったら成長できるのか。どうやったらはい上がれるのか。自分と向き合って考える作業をするのが楽しい」

 そう言えば、3月の代表合宿でも同じような話を聞いた。UAE戦を終え、タイ戦に向けた練習後の取材で、所属のACミランで出場機会に恵まれない日本代表FW本田もこう言っていた。

 「僕はすごく今が楽しくて。こういうこと(逆境)が起これば起こるほど、自分自身が試されている気がして。また右肩上がりにしていく。それをどうしていこうか考えている自分が好きだし、乗り越えていっている自分も好き。この期間を非常に楽しんでいる。道筋は見えていますよ、方法は見えていますけど、話すと長くなるので。今やれることはやる」

 その話を丹羽にした。すると笑いながら「俺は本田くんのこと、よく知らないけど、ようするに物の見方の問題。正面から見れば、俺は試合に出ていない選手。だけど横や斜めから見れば、また違った見方ができるかもしれない。俺自身は違った角度から見て、自分がまだ成長できることを楽しめている」と答えた。

 実際、G大阪は4月にACLを含めてあと6試合も戦わなければならない。連戦で疲労もたまる中、ウイングバックやCBをこなせる丹羽の力は必要になる。31歳のベテランは「今は力をためている時期」と説明する。

 私事だが、私の周りも4月から少し環境が変わった。私自身、意気込み半分、不安半分…いや、不安の方が圧倒的に大きかったと思う。でも、2人の話を聞いて「成長できるきっかけ」を与えてもらったと感じられた。多くの人の新生活がスタートする4月。新たな環境に不安が多い4月。もし壁にぶち当たった人がいれば、ぜひ、丹羽や本田の言葉を思い出してみて下さい。【小杉舞】


 ◆小杉舞(こすぎ・まい)1990年(平2)6月21日、奈良市生まれ。大阪教育大を卒業し、14年に大阪本社に入社。1年目の同11月から西日本サッカー担当。担当はG大阪や神戸など関西クラブ。甲子園球場での売り子時代に培った体力は自信あり。