<高校サッカー:尚志3-3(PK4-2)桐光学園>◇3日◇3回戦◇ニッパ球

 尚志(福島)が創部14年目で初のベスト8を決めた。全国区の桐光学園(神奈川)と対戦し、PK戦で制した。先手を取りながら逆転されたが、終了7分前で同点に追いつく執念を見せ、県勢としては02年度の福島東以来9大会ぶりの準々決勝進出となった。

 これは使い古された言葉ではない。「諦めない」。仲村浩二監督(39)も選手も繰り返し口にする言葉通りの戦いで、尚志が初めてベスト8に進んだ。象徴が3点目だった。2-1から逆転を許し、1点を追った後半33分に粘りを見せる。FW皿良(さらら)優介(2年)の股抜きラストパスを中央で受けたMF後藤拓也(3年)が、前にいたDF2人を左へのワントラップで置き去り。左足でGKの股下を射抜き、仲間からもみくちゃにされた。

 土壇場で追いつき、PK戦に持ち込んだ時点で勝利を確信していた。今夏のインターハイ。GK秋山慧介(2年)の活躍で2試合連続PK戦を制し、8強入りしたからだ。実績通りに秋山が1本目を右方向に横っ跳びしてセーブ。2本目もコースを読み切って重圧をかけ、ミスを誘った。そして4人目の後藤がゴールネットを揺らすと、イレブンが笑い、叫びながら駆け寄った。

 練習ではPKを3本続けて外すと丸刈りになる「おきて」がある。秋山は「(司令塔の)山岸さんを2連続で止めたこともある。練習から本気です」。先輩の分も止めた。控えGK黒沢瑠衣(3年)の天栄村の実家が震災で半壊。部活動を休まなければならなかった黒沢に、秋山は「戻ってきてください。一緒にやりましょう」とメールを送った。普段からアドバイスをくれる先輩の分までゴールを守った。

 2点目を決めた上、“2アシスト”で全3得点に絡んだ皿良も光った。前日の2回戦で右足外側を負傷したが、痛み止めを飲んで強行出場。「監督から『1、2年生は来年があると思うな。骨が折れてでも勝つ試合だ』と言われていたし、前半でつぶれる気だった」と燃えていた。

 16強の壁を、ついに破った。3点目を決めた後藤は昨年度、8強目前で関大一(大阪)に敗れた試合に後半ロスタイムから出場したが、約1分しかプレーできなかった。今回も終盤に勝ち越され「1年前は何もできなかったし『また16強か』と思ったら悔しくなってきた。絶対に追いつこうと思った」と発奮。白河市出身で「県民として福島のためにという思いは強い」と胸を張った。

 ベスト8は県勢9大会ぶり3度目。次は初の4強進出=国立切符をかけて、5日の準々決勝で桐生一(群馬)と戦う。仲村監督は「解散も覚悟した年に8強とは…。このメンバーで(決勝まで)あと3試合、戦えれば幸せです」と頂点をも視界にとらえた。【木下淳】