サッカー日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督(62)が、世界に通用する日本サッカー構築のため、まずは“破壊”に徹する。今日31日の国際親善試合ウズベキスタン戦(味スタ)では、予告通りに27日のチュニジア戦からスタメンを大幅に入れ替える方針。30日の公式記者会見では、人数をかけて連動する攻撃スタイルやFKなど、日本代表の特長とされたプレーに改善の必要性があると強調した。

 ウズベキスタン戦前日、夕暮れの味の素スタジアム。美しく仕上がった緑のピッチに仁王立ちしたハリルホジッチ監督は、くさびのパスを意識した練習や、サイドのスペースに選手を走らせることを意識したミニゲームなどで、1つ1つのプレーに細かく注文をつけた。

 公式練習に先立つ会見。指揮官はチームとして重視するプレーを挙げていた。

 ハリルホジッチ監督 チュニジア戦では、約550のパスを試み、39%のワンタッチパスが成功した。こういうことを要求している。ボールを奪った瞬間、その(密集した)ゾーンからできるだけ素早く出る。できるだけ前の、ボールを受けやすい選手に出せと。

 まずはボールを奪うため「リスクを負い、高い位置にブロックをつくってプレスをかける」ことを徹底。強い圧力で、相手のパス網を“破壊”する。そしてボールを奪った瞬間、長い縦パスで相手の最初の守備ブロックも“破壊”する。

 チームづくりのために壊すのは、相手のサッカーだけではない。この日の朝まで、ハリルホジッチ監督は日本代表の過去の試合と、指揮を執ったチュニジア戦の分析と比較を重ね、こう結論づけた。「攻撃、守備ともに、以前よりチュニジア戦は向上した」。ポゼッション(ボール保持)重視の既存のスタイルへの肯定的な見方を“破壊”。1次リーグで敗退したブラジルW杯や8強止まりのアジア杯など、過去の日本サッカーを、わずか1試合で上回ったと言い切った。

 返す刀で日本代表の常識も壊す。W杯でも本田、遠藤ら名手が直接ゴールに決め、お家芸の1つとされるFKについて「統計を取ったが、FKで得点がほとんど入っていない」と首を振った。「現代サッカーでは33%がFKからの得点。そこで存在感を見せないと。よいキックができる選手はいる。向上のチャンスはある」と改善を求めた。

 ミーティングでも、映像やデータなどの客観的な材料を示し、意識改革を求めている。本田が務めてきたPKキッカーについても、この日の公式練習の最後に攻撃陣にPKを蹴らせて適性を見極めた。

 ウズベキスタン戦の先発について「1試合目と全く違うメンバーになる」とあらためて明言した。「いいと思うが、今回呼んでいない選手も2、3人いる」と話し、今回のメンバーが今後のベースになるとは限らないとさえ言う。本気で日本を変えたい。だからこそ、魔術師は1度、「日本はこうあるべき」という既存のイメージを破壊する。【塩畑大輔】