なでしこジャパン(FIFAランク4位)の背番号10、MF澤穂希(36=INAC神戸)が364日ぶりの代表復帰戦で決勝ゴールを決めた。ニュージーランド(同17位)戦の前半24分、MF宮間あや(30)の左CKを右足ボレーで押し込み、国内1047日ぶりの得点で1-0の勝利に導いた。なでしこは連覇に挑む女子W杯カナダ大会(6月6日開幕)に向け、28日はイタリアと南長野運動公園総合球技場で対戦。6月1日にカナダへ出発する。

 MF澤が自らの決勝ゴールでW杯連覇へのスタートを切った。前半24分、宮間の左CK。密着マークする相手にフェイントをかけ、マークを一瞬で振りほどく。ゴール正面へ走り込むと、右足ジャンピングボレー。GKの右脇を射抜き、満面の笑みでガッツポーズした。自身が不在の間、チームを支えてきた宮間を抱擁。「いつも自分が入ってくる場所を見てくれている。目の前にきたボールがよくて、触るだけでした」と、後輩に感謝した。

 国内試合での得点は、12年ロンドン五輪前のオーストラリア戦(国立)以来1047日ぶり。守備ではMF川村と組んだボランチで球際の強さを見せた。体格で上回る相手を体当たりで転倒させた。ピンチでは鬼の形相でスライディング。「久しぶりに日の丸をつけ、青い10番を背負ってうれしかった。体を張ってスライディングしたり、ゴールをとったり、背中で見せるのが自分の役割」。試合前にMF安藤と約束していた「背中で見せていこうね」の言葉を90分間体現した。

 36歳260日で出場して得点し男女通じた日本代表最年長記録を更新した。その理由は、自己管理能力の高さにある。「この年齢になると、やっぱりケガもしやすくなるし、疲労も残る。それは仕方がないこと。そのぶん、前回のW杯のころよりも、日常から体を大切にするようになった」。練習前後のマッサージ時間を2倍増やした。風邪予防のため、移動の電車ではつり革を直接つかまない。遠征先には、お気に入りのせっけんを持ち込む徹底ぶりだ。

 佐々木監督も「『澤の神』が勝利に導いてくれた」と絶賛した。だが澤自身は「(W杯1次リーグ初戦で対戦する)仮想スイスでしたが、実際はもっとレベルが高い。今日の結果を受け止めないとダメ」。特に攻撃面でのパスワークやクロスへの入り、こぼれ球の対応に課題を明言し、気を引き締めることも忘れなかった。男女通じて前人未到の6大会連続W杯出場へ「やるからには力を合わせて頂点を狙う」と宣言。やっぱり、頼りになる大黒柱だ。【鎌田直秀】

 ▼日本代表最年長記録 澤がGKとして活躍した山郷のぞみ(浦和)の36歳52日を抜き、36歳260日の最年長出場記録を達成した。同時に自身の持つ最年長ゴール記録も更新。男子の最年長得点記録はラモス瑠偉(V川崎)の36歳85日で、澤の36歳260日は男女通じて日本代表の最年長ゴール記録となった。なお、男子の最年長出場は川本泰三(大阪クラブ)が54年に記録した40歳106日で、2位がラモス瑠偉の38歳181日。