日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(64)が悲壮な決意で大一番に臨む。日本(FIFAランク51位)は今日15日、W杯アジア最終予選でサウジアラビア(同54位)と対戦する。指揮官は絶対的な存在のFW本田圭佑(30=ACミラン)を先発から外しロシア行き、自身の去就などを左右する運命の一戦に臨む決意を固めたようだ。

 腹をくくった。そんな悲壮な決意が伝わってきた。公式会見でハリルホジッチ監督は怒ったり、言い訳するわけでもなくストレートに決意を口にした。言葉はグッと力を帯びていく。ここ最近、会見ではどこか生気がなかったが、大一番を前に口調に張りが戻った。

 「ここまで、選手はすごく強い気持ちで戦ってきた。W杯に行きたいという強い気持ちが見える。おそらく、何人かの選手は最後の最終予選となるだろう。成功でA代表を終えたいと思っているはず。私が明日求めるのは、我々の本当に重要な試合、最終予選突破につながる試合で、強い気持ちで勝利をつかみに行くということだ」

 指揮官に対しては日本協会内に相変わらず手腕を疑問視する声がくすぶる。結果次第では自身も「最後」となる可能性がある。相手は首位。勝てば首位浮上もあり、敗れると本大会出場圏外の4位転落するかもしれない“天国か地獄”。運命の一戦で本田を先発から外す、思い切った手を打つことになる。

 「(報道陣が先発に)誰を選ぶか聞きたいのは分かっている。ただ、日本の長所は組織。組織プレーが我々のベース」。明言こそしなかったが、ベンチスタートが濃厚な本田、香川の状態を聞かれると「決断をいろいろとしなければいけない」とした。本田の代役として右FWは浅野が濃厚。香川についてはトップ下に入れ、清武を右FWに回すオプションも試したようだが“賭け”に出る。

 「チームは11人の先発だけで決まるものではない。例えば、サウジアラビアは毎試合、最後に勝つ。それは交代で入ってくる選手のおかげ。彼らが違いを生む。我々には25人の選手がいて、先発はより良い選手を選ぶ。ただ、交代で入る選手はリザーブ(控え)ではなく、ジョーカー(切り札)だ」

 長く代表のキングとして君臨してきた本田を「ジョーカー」に指名した。勝負どころで投入し、必勝を期す構え。「成長するためのテストだ。苦痛を伴いながらの」。会見前には、じっと前だけを見て、黙々とランニングしていた。痛みの先に歓喜があると信じ、突き進む。【八反誠】