【アルアイン(UAE)21日】日本代表のFW本田圭佑(30=ACミラン)が、真のリーダーとして勝利へ導く。23日(日本時間24日未明)のW杯アジア最終予選UAE戦に向け現地で調整した。クラブで出場機会のない大黒柱は、先発落ちも覚悟。MF長谷部主将が負傷離脱した窮地に、精神的支柱となる決意を示した上で、少ない時間でも得点を奪うと誓った。B組は勝ち点1差に4カ国がひしめく大混戦となっている。

 周囲を砂漠に囲まれたオマーンとの国境近く。オアシスの街に雨が降った。前日20日(日本時間21日未明)から合流した本田はピッチに出ると、普段から寡黙なMF山口に歩み寄った。並走しながら、笑みがこぼれるまで話し続ける。別メニューでダッシュを課された清武が疲労で膝に手をつくと、遠くからわざとパスを出して「顔を上げろ」と訴えた。かつての孤高の男が、精神的に日本を支えようとする姿があった。

 「自分が(試合に)出ていない。個人的に(思うこと)はありますけど、代表全体を見た時にそれはどっちでもいい。勝ってW杯に出ることが一番の目標。そのために自分に何ができるのか。選手として、チームのリーダーとしてやる」

 自我を殺した。それはたやすいことではないはずだ。だが日本をW杯に導くため。ACミランで出場機会がなく、苦悩の時間を過ごす中で導き出した結論だった。

 「いずれは(代表を)外れて、いずれはサッカーをやめる。なんてことのない自然の摂理。そして、そのうち人は死ぬ。それがいつか、というだけ。今、俺がそうなることは本望ではないし、自分の努力で切り開くスタイルは変わらない」

 そう言いつつも、黒子に徹する覚悟も示した。

 「精神的なものはいくらでも役に立つ。状況が状況(大一番)であるほど役に立つことは自覚している」

 10年W杯南アフリカ大会の最中。代表での立場が危うくなりつつあった中村俊輔(現磐田)にメールが届いた。カズ(現横浜FC)からだった。「サッカーはワンプレーでヒーローになれる」。その言葉は、今の本田にも当てはまる。だからこそ、心から言った。

 「もちろん、自分が出たら点を取るつもりです」

 真のリーダーとして。欠かせないエースとして。宿敵UAEを沈める。【益子浩一】