9日に開幕したサッカーのアジア杯で、パレスチナ代表は12日の初戦で前回王者の日本代表に挑戦する。

 イスラエルとの対立を乗り越えての初出場で、28歳のエースFWヌマン選手は「ワールドカップと同じような夢の舞台だ。パレスチナ人は世界中のみんなと同じ人間で、同じようにサッカーをしたい。大会を通じ、思いを伝えたい」と興奮気味に話した。

 予選を兼ねたアジア・チャレンジカップを制して出場権を得たが、障害も多かった。

 親善試合も簡単にはできず、ガザ地区とヨルダン川西岸間は分断状態にあるため移動が制限され、選手選考にも影響を与えた。チーム関係者によると、今大会でも査証(ビザ)の発給が難航し、主力選手が出場を見送ったという。

 パレスチナ事情に詳しいNPO法人グッドヘルスジャパンの篠原明代表(44)は「反骨精神や民族への誇りがすごい」と苦境を乗り越えてきた理由に精神面の強さを挙げる。強化の背景には国際大会に出てイスラエルの圧力におびえる理不尽な状況を知ってもらいたいという願いもあり「日本や他国とは全く違う意欲を持っている」と語る。

 武器は団結力だ。サウジアラビアでプレーするヌマン選手のような海外組とアマチュアの国内組が混在するが、全員が肩を組んで円陣をつくり「パレスチナ」と叫んで練習を始める。21歳でスウェーデンのチーム所属のダダ選手は「日本相手でもチャンスはある」と番狂わせを狙っている。