岡田武史監督(52)の「背水」宣言が、日本代表イレブンに浸透した。9月6日のW杯アジア最終予選バーレーン戦(アウェー)に向けた合宿が30日千葉県内で、MF中村俊ら欧州組4人とJ2広島のFW佐藤を除く18人でスタート。選手たちは、同監督の一戦必勝の意気込みを受け止め、「覚悟」「精進」などの言葉を相次いで口にした。10年南アフリカ大会出場をかけた、来年6月17日まで続く10カ月の長く厳しい戦いが始まった。

 岡田監督が「背水」と断言した25日のバーレーン戦メンバー発表から5日。指揮官の発した一言は、選手たちの心に深く焼き付いていた。合宿宿舎に姿を見せたMF中村憲は「監督が背水とおっしゃった以上、選手も同じ気持ちでやる。全部出し切る気持ちでやらないとダメ」と言い切った。今野も「今の気持ちは『重圧』。代表に入れなかった人もいるから。でもいい方向に持っていけばプラス」と厳しい表情で話した。

 初戦の相手のバーレーンには、今年3月の3次予選アウェー戦で敗退した。それを踏まえて岡田監督は、「背水」という言葉を使って自らを追い込んだ。中村憲同様、3月のアウェー戦を経験しているFW巻は「負けた試合でスタメンだった自分が、こういう形でリベンジできるチャンスが与えられた」と喜んだ後、今の気持ちを「覚悟」と表した。

 実は岡田監督は、この日の練習前のミーティングでも「背水」という言葉を使い、初戦の大事さを選手に訴えた。「目の前の1試合が大事。先を見るんじゃなく、目先の試合が大事という意味で言った」。恒例のDVDによる戦術指導はあえてせず、口頭で選手に基本戦術をあらためて訴えた。足元をみつめ、目の前の課題やハードルを1つ1つ越えていく方針を徹底するためだった。

 バーレーン戦の悔しさを知らない選手も、監督の言葉の重みを感じ取った。国際Aマッチ初陣だった20日のウルグアイ戦で、経験不足を露呈し3失点に泣いたDF高木は「うまくいかなかったけど、いい経験ができた」と振り返り、バーレーン戦では「精進」すると誓った。選手たちの気合の入った表情や言葉に、岡田監督は「積極性があっていい」と満足げに笑った。「背水」を旗印に掲げた戦いが始まった。