日本サッカー協会トップが電撃的に交代した中、次期日本代表監督の選定を担当する日本協会の原博実強化担当技術委員長(51)が、極秘裏に南米入りしていたことが25日、分かった。岡田武史監督の後任選定作業で、いよいよ現場責任者が直接交渉に乗り出した。候補には現チリ代表監督マルセロ・ビエルサ氏(54)や、元アルゼンチン代表監督ホセ・ペケルマン氏(60)らが挙がっている。この日、日本協会の評議員会と理事会で会長就任が決まった小倉純二新会長(71)も原委員長らに選定を一任することを明言。複数の有力候補と直接面談し、帰国後に小倉新会長に報告。8月中旬には最終決定する方針。

 原委員長が南米入りしたのは23日で、アルゼンチンとチリを移動しながら、代表監督候補や代理人などの関係者とスケジュールを合わせながら交渉を続けている。ただ新体制発足の端境期での交渉だけに、具体的な話し合いをできない環境にある。渡航中に協会トップの政権交代に遭遇し、代表監督人事は少なからずも影響を受けている。

 そうした事態を踏まえて小倉新会長は新理事会後の会見で、代表監督の人選について原委員長、大仁副会長への一任を強調した。「原委員長がやっていたことをそのままやってもらいたい。彼は電話をしてくれるし、どんどんやってもらいたい」。9月9日に新体制では初の理事会がある。小倉新会長は「決定までにかける時間はない。(9月9日に間に合わなければ先に決めて)追認の可能性もある」とし、8月中の決着を目指す考えを示した。

 原委員長は遠く南米で協会の政変を把握しながら、交渉を続けていく。今回の渡航最大の目的は、日本代表監督の置かれているスケジュール面での制約を説明することにある。春秋制のJリーグで、選手を招集できるタイミングは南米や欧州とは異なる。

 また11月にはアジア大会、11年1月にはアジア杯など既に決定している大会もある。アジアは広く来年夏場からの14年W杯アジア予選でも、強行日程と長距離移動は避けられない。そうした中で、中長期的な育成を主眼にしたチーム編成に理解を求めていく。数人の候補者に同様の説明をして、どれだけの理解、意欲を持っているかをリサーチし、なるべく早く帰国して報告する。

 小倉新会長は「あまり多くのお金は出せない。ただそれ以外の制約はない。彼が思うように進めてもらいたい」と、あらためて原委員長への信頼を強調した。犬飼会長は短命政権。小倉政権も限定2年。支持母体が短命で終わると分かっているだけに、新監督の選定は非常に難しいかじ取りを迫られている。