<アジア大会・サッカー:日本1-0UAE>◇男子決勝◇25日◇中国・広州

 若き日の丸戦士が、アジアの頂点に立った。関塚隆監督(50)率いるU-21日本代表は、UAEの猛攻に苦しみながらもDF実藤友紀(21=高知大)の決勝ゴールで1-0の勝利。来年3月に始まる12年ロンドン五輪予選に向けて、弾みをつけた。就任わずか2カ月で最高の結果を残した関塚監督。川崎F監督時代の2位4回で「シルバーメダル・コレクター」とまで言われた闘将の胸に、金メダルが輝いた。

 関塚監督が、選手たちの手で宙に舞った。1戦1戦たくましさを増した選手たちに、笑顔がはじけた。「タフな試合だったが、日本らしいサッカーができた。アジアで勝ったことは、本当にうれしい」。金メダルとともに大きな自信を胸にして、指揮官は話した。

 苦しかった。相手のUAEは、昨年のU-20W杯8強メンバーが8人。U-23の選手も多く、押し込まれた。ピンチの連続で、バーにも救われた。「11人がまとまったのが勝因」と関塚監督。GK安藤を中心に猛攻に耐え抜いた後半29分、MF水沼のクロスを逆サイドに攻め上がったDF実藤がゴールに突き刺した。関塚監督はベンチを飛び出し、右拳を突き上げた。

 大会前から苦戦が予想された。Jリーグの主力は呼べず、主体となったのは学生とJ1でもプレー機会の少ない選手。代表発表の席で、原技術委員長が「呼びたい選手が呼べず、監督には申し訳なかった」と謝るほどだった。「U-21B代表」とさえ言われたが「これがアジア大会代表。経験を積むにはいい機会」と関塚監督は前向きだった。

 練習できたのは、わずか7日。まず、対話から始めた。食事会場では積極的に選手に声をかけた。「このチームで」という言葉を何度も口にした。「だいぶチームらしくなった」という報道陣の言葉に「だいぶ、じゃダメ。完全にチームにならないと」と厳しい口調で答えたのは、大会直前の千葉合宿でのことだった。

 7試合すべて、君が代演奏時はベンチの全選手が肩を組んだ。激しいブーイングの中で初戦の地元中国に3-0と快勝。1試合ごとに力をつけ、チームが1つになったからこそ金メダルに輝いた。「1人では成し遂げられなかった」と、関塚監督は選手、スタッフ全員に感謝した。川崎F監督時代は、J1とナビスコ杯で2回の2位が最高。選手時代も八千代高の総体、早大の大学選手権も2位だった。本田技研時代も優勝には届かなかった。ようやくつかんだ金メダルだ。川崎F時代の教え子でもあるDF薗田は「関さん(関塚監督)だからここまでこられた」と話した。関塚監督の座右の銘は「初心忘るべからず」。本当の勝負、ロンドン五輪への道はここから始まる。