<女子W杯:日本2-2(PK3-1)米国>◇決勝◇17日◇ドイツ・フランクフルト

 MF沢穂希(32=INAC)が、日本サッカー界の夢を成し遂げた。女子W杯ドイツ大会決勝で、なでしこジャパンはFIFA(国際サッカー連盟)ランク1位の米国をPK戦の末破り、FIFA主催大会で男女を通じ史上初の優勝という快挙を達成した。試合はなでしこジャパンが2度先行され追い付く死闘となった。沢は1-2と勝ち越された延長後半12分、起死回生の同点弾を、右足アウトサイドで芸術的に決め、土壇場でチームを救った。今大会5得点で得点王、最優秀選手にも輝き、世界の沢の実力を存分に示した。5大会連続出場の精神的支柱は、最後までなでしこジャパンをけん引し、日本サッカー界に金字塔を打ち立てた。

 キングも沢に脱帽だ。横浜FCのFW三浦知良(カズ=44)は18日、横浜市内での練習後、沢について「もう『ゴッド』と呼んでもいいんじゃないのかな」と称賛した。沢はメディアなどから「なでしこクイーン」とも呼ばれている。「キング」の異名をとるカズは「(MVP獲得や得点王は)結果も残していますから当然だと思う」と話し、クイーン(女王)からゴッド(神)への“格上げ”を勧めた。「『ゴッド姉ちゃん』の和田アキ子さんから『ゴッド』をもらったらいいんじゃないかな」と、継承案を提案するほど、沢の活躍を喜んでいた。

 決勝は自宅でテレビ観戦した。沢のプレーに「以前はFWだったが、ベテランになってボランチに入り後ろからチームを鼓舞してバランスも取る。サッカーを読み取る力もたけている。ゴールに直結するプレーができていて、1つのプレーで雰囲気を変えられる」と、献身的にチームを支える沢の姿に共感しつつ、さらに諦めず、ひたむきにボールにくらいつき、追いつく展開に「サッカーの醍醐味(だいごみ)というか、一番大切なモノを教わった」。

 実はカズのサッカー人生の原点の1つに、日本女子サッカーの奮闘があった。日本代表デビューを果たした90年のアジア大会。男子はベスト8に終わり、銀メダルを獲得した女子の試合をスタンド観戦した。「ひたむきな姿に、自分が見失っていたものを気付かされた」。約20年の歳月を経て、再びキングが刺激を受けた。