<国際親善試合:日本3-2ベルギー>◇19日(日本時間20日)◇ブリュッセル

 FW柿谷曜一朗(23=C大阪)が、1ゴール1アシストで汚名返上を果たした。前半37分に頭で同点ゴール、後半18分にはFW岡崎の3点目を演出した。先発落ちしたオランダ戦(16日)は、終盤に決定機を外して強豪からの大金星をフイにした。悔しさを胸に抱いて臨み、海外組も含めたA代表では初となるゴールで勝利に貢献した。

 過剰なほどの重圧を、背負い込んでいた。金星への導火線になった同点ゴールを決めても、柿谷に笑顔はない。この日ばかりは喜んでもいいはずなのに、反省の言葉ばかりが並んだ。

 「申し訳ない。(得点を取れて)ホッとはしていないです。ずっと結果を残せなかったという事実は、変わらない。(仲間から)『やっと(点を)取れたな』と声をかけられました。でも試合数を数えたら…。満足はできないです」

 国内組だけで臨んだ7月の東アジア杯で3得点を挙げはしたものの、海外組を交えたA代表ではこれが初ゴールになった。1点を追う前半37分。ゴール前でDF2人の間に割って入り、DF酒井宏のクロスを頭で合わせた。劣勢に立たされた前半に決めた値千金の同点弾は“真の代表”としては、8月のウルグアイ戦から7戦目の得点だった。後半18分にも好連係から岡崎のゴールをアシスト。最前線からひたむきにボールを追い、途中交代するまで攻守にわたって貢献した。

 「いいボールが来たので、飛び込むだけでした。(自分の)結果が出ない中で、ゴールをしたい気持ちがあった。失点は仕方がない。その分、僕ら前線の人間が点を取ればいいと思っていました」

 悔しさを力に変えた。東アジア杯以降、FWのレギュラーにまで上り詰めたが、オランダ戦は大迫に先発を譲った。ライバルが得点を決める一方、途中出場しながら後半33分に香川からの絶好のスルーパスをフリーで外した。決めていれば、10年W杯準優勝国を倒す逆転弾になっていたかもしれなかった。沈んだ気持ちのまま、オランダ戦の会場だったドイツとの国境に近いゲンクから、約100キロの道のりをバスで移動。牧草地に風車が回る現地の風景を眺めながら、必死に気持ちを切り替えていた。

 新鋭ベルギーが擁するFWルカクやMFアザールら、強烈なタレントの前でも通用することを示した。それでも「海外クラブでやりたい気持ちが出てきたか?」との問いに「いや、別に…。セレッソに戻って頑張ります」とさらりとかわした。ベルギー戦後は休む間もなく、スタジアムからバスでパリへと移動し、帰国の途についた。今日21日には大阪に戻り、再び牙を研ぐ。W杯で活躍する姿を思い描いて。【益子浩一】