<アギーレ問題こう思う(1):スペイン紙記者が解説>

 日本代表のハビエル・アギーレ監督(56)が八百長に関与した疑いがあるとして、スペインの検察当局からバレンシア裁判所に告発された。この騒動や日本協会の対応について関係者はどう見るのか?

 日刊スポーツでは「アギーレ問題

 こう思う」と題して緊急連載する。第1回は、スペイン・マルカ紙のセルヒオ・フェルナンデス記者(35)。

 今回のアギーレ監督の八百長疑惑に、日本協会は頭を悩ませているだろう。告発者でもあるスペイン・プロリーグ機構(LFP)のテバス会長は「初めて、本当の真実、法的な真実が我々のもとに」と話している。この言葉からは、悪いうわさを何事もなかったように立ち消えさせることなく「絶対に真相を究明する」という強い意志を感じる。

 もちろん現時点で、アギーレ監督ら、告発された41人にどんな判決が下されるかは分からない。裁判は疑惑の試合が開催されたバレンシアの裁判所を舞台に行われ、裁判長が証言を必要だと思う時にアギーレ監督を召喚する。裁判所関係者への取材では、最悪のケースとして活動資格停止処分があり得るとのこと。八百長に関して1~4年の懲役の可能性もいわれているが、今回それはないという。

 この現状に対し、日本協会はどのように対応すればいいのか。それは協会が自らの判断で決めるしかない。日本では文化的に、嫌疑をかけられた人物が代表監督を務めることが難しいということは理解している。また一般的にもサッカー監督や、どのジャンルのスポーツ選手であっても「八百長に関連した」といわれてしまうことは、その人物のイメージを傷つける。アスリートはそういう事象とは無縁でなければならない。

 一方で、アギーレ監督はこの問題に関係しているとされているだけで、実際に有罪判決を受けたわけではない。もし今、彼を解任し、その後の裁判の結果、無罪であった場合、それは公平な決断ではなかったということになってしまう。

 1つ言えることは、誠実な人格者で知られるスペイン代表のデルボスケ監督に同じ疑惑がかけられた場合。彼の人間性から言えば、まったくあり得ないことだが、もしそうなったら、すべてが裁判によって明らかになる前に、彼自身が辞任をしているだろう。

 アギーレ監督が今後も監督を続ける意思を持っているのであれば、身の潔白を証明しなければならない。裁判所関係者は41人の中で彼が一番厳しい状況だとも言っている。検事は、アギーレ監督の銀行口座に当時、サラゴサの会長から振り込みがあり、翌日にそれを引き出しているというお金の動きを告発の証拠の1つとしている。

 それに対し、アギーレ監督が証明しなければならないことは2つある。1つは、引き出したお金が相手チームには渡っていないと証明すること。もう1つは、振り込みが八百長資金ではなく正規のボーナスだったというのであれば、ちゃんと税務局に申請したという記録を示さなければならない。

 スペインでは、あの試合が八百長だったかについては、あまり興味を持たれていない。誰もがきな臭く思っており、マルカ紙は試合の戦評に「サラゴサ、脚本通りに」というタイトルをつけたぐらいだ。人々が関心を示しているのは、これまで「ある、ある」といわれていたサッカー界の八百長が、初めて司法の手によって裁かれるということなのだ。(マルカ紙記者)

 ◆セルヒオ・フェルナンデス

 1979年9月22日、スペイン・マドリード生まれ。スペインを代表する日刊のスポーツ紙「マルカ」の記者。これまでRマドリード担当としてクリスティアノ・ロナルドを中心に取材。12年欧州選手権、14年W杯でもポルトガル代表を追った。現在は八百長問題、過激サポーター問題、ネイマールのバルセロナ移籍の裏側など、ピッチ外の話題も数多く取材している。