<15年2月、シンガポール遠征>

 リオデジャネイロ五輪アジア1次予選(3月27日開幕、マレーシア)を約1カ月半後に控え、暑熱対策として隣国シンガポールに入った。八百長騒動でA代表のハビエル・アギーレ監督が解任された後、初の代表活動。本来、A代表を頂点にU-22から下の世代別代表まで統一されるはずのコンセプトが不明瞭なまま遠征を迎えることになった。

 ▼国際親善試合(対U-23シンガポール代表)8○1【得点者】中島翔哉2、鈴木武蔵、井出遙也、大島僚太、荒野拓馬2、室屋成

 背番号10のMF中島が先制弾を含む2得点と爆発した。1月のアジア杯オーストラリア大会前にA代表のトレーニングパートナーを務めた男が経験の違いを見せた。前半10分、アギーレジャパン招集歴のあるDF松原からロングパス。ワンバウンドした球を左足でダイレクトボレーで決めた。

 同22分には2点目だ。アジア杯代表のDF植田がインターセプト。MF豊川経由で回ってきたボールを今度は右足で蹴り込んだ。12月29日から1月8日までアジア杯のトレーニングパートナーを任され、練習試合で得点。「アギーレさんから『最後までいていいよ』と言われた」と評価された実力をリオ世代で示した。

 チームの目標はシンプルに「点を取る」だった。アジア杯でA代表が決定力不足を露呈し、準々決勝で敗退。同大会から抽出した課題の映像を元に、試合前夜にミーティングしていた。中島が「『日本全体の課題だ』と監督に言われながら見た。僕らは点を取ってこそ、お金をもらえる職業」と話したようにゴールへの意識が生まれ、ほぼ10分に1点のペースで、すべて流れの中から得点を重ねた。

 アギーレ氏の解任騒動が日本サッカー界に暗い影を落とす中、手倉森監督は「我々が希望の光になりたい」と快勝に納得。翌3月開幕の1次予選に向けて手応えをつかむ遠征となった。