<アジアCL:鹿島2-1全北現代>◇28日◇1次リーグ◇F組◇カシマ

 既に1次リーグ突破を決めていたF組の鹿島が、全北現代(韓国)を下し、32チーム参加となった08年大会以降では初の全勝での1位通過を決めた。前半20分に韓国代表DFイ・ジョンス(30)が先制点を挙げると、同22分にはMF野沢拓也(28)が芸術的な連係から2点目を突き刺した。5月12日の決勝トーナメント(T)1回戦ではホームでオリベイラ監督の弟ワルデマール氏が率いる浦項(韓国)を迎え撃つ。

 芸術的な2点目が、鹿島を1次リーグ全勝首位突破に導いた。1点リードで迎えた前半22分。MF小笠原のFKをDF岩政、FW興梠、岩政とつなぐと、最後は野沢だ。岩政からの浮き球を冷静にボレーで突き刺し「(岩政の)完ぺきなパス。決めるだけだった」と満面の笑みを浮かべた。

 技術力の高い鹿島らしい一撃だ。興梠からのリターンパスを受けた岩政が「(興梠)慎三からは打て!と言われたけど、僕が左足ボレーを打つのは(外す)リスクがあるから、パスに変えた」と瞬時の判断で野沢へ山なりのパスを供給。「岩政の左足(のパス)ならこのあたりに来ると思った」という予測が当たった野沢がフィニッシュした。

 「プロになって初めて試合中に(相手に対して)うまい!って言っちゃったよ。ボールが足もとに収まるし、ああいうところを盗みたいくらい」と野沢が振り返ったように、全北現代の実力は本物だった。故障を抱えるエースFW李東国を投入された後半は、むしろ劣勢を強いられたほど。それでも「こんなところで負けられない」(小笠原)という気持ちをチーム一丸で持ち続けて逃げ切った。

 昨季は決勝トーナメント1回戦でFCソウルにPK戦で敗れ、ホームで屈辱的な姿をさらした。岩政は「昨年は一発勝負の1回戦に慣れていなかったところもあったが、今年はいい状態で臨める」とキッパリ。右ひざ裏の違和感を訴えたDF内田の代わりを途中出場の万能型DF伊野波が埋めるなど、苦戦を強いられるJリーグ勢の中で選手層の厚さも際立っている。

 次の対戦相手はオリベイラ監督の弟ワルデマール氏が率いる浦項。指揮官は「直接対決をしたところで、兄弟愛に変わりはない。サッカーへの取り組みも似ているし、いい試合になる」と話した。充実の鹿島が「兄弟対決」を乗り越えれば、その先にあるアジア制覇が見えてくる。【菅家大輔】