INAC神戸のMF澤穂希(36)が、浦和との開幕戦で攻守に猛アピールした。守備では90分間走り抜いてピンチを未然に防ぎ、攻撃では2-1の後半45分にCKを頭で合わせて得点し、勝利に貢献した。6月開幕の女子W杯カナダ大会のメンバー選考を進める、なでしこジャパン佐々木則夫監督(56)の前であらためて存在感を示した。

 澤の会心の一撃がゴールネットに突き刺さった。1点リードの後半45分の左CK。ゴール中央からニアに走り込み、頭でとらえた。「得意な形なので。今年は貪欲に点を取りたい。試合が厳しい時に点を取れる選手でいたい」。頭と足の違いはあるが、11年W杯ドイツ大会の決勝米国戦での得点と同じような動きから「澤ゾーン」での今季初得点。ガッツポーズしながらアシストしたMF川澄に駆け寄ると、抱き合った。

 開始直後から気迫がみなぎっていた。ヘディングでの競り合い後、主審の相手ボールとの判定に「私、触ってないよ~」と、荒々しい声がピッチに響き渡った。守備でも浦和MF猶本を体当たりで1回転させる場面もあった。結果が出ない悔しさや、日本代表から遠ざかったもどかしさから、「サッカーするのがつまらない」と笑顔が消えた昨季終盤の動きとは、明らかに違っていた。

 昨年末、少女時代から指導を受けた松田氏の監督就任が決まった。正月には、「今年は楽しくサッカーができそうな気がする」と気持ちが変化していた。1月の始動から走り続け、今月25日の必勝祈願では絵馬に「皆が笑顔絶えない1年となりますように」と書いた。この日、「充実しているのは確かです」と晴れやかな表情だった。

 6月には史上初となる6大会連続出場が懸かる女子W杯カナダ大会を迎える。前哨戦の3月のアルガルベ杯には招集されず、絶対的な立場とは言えない。なでしこ佐々木監督は試合後、澤について「固有名詞は出さない」と言葉を濁し「いい試合を見せてもらった」と言った。

 「(代表の)意識はしていません。とにかく自分自身ができることをやるだけ。今はチームで代表クラスの選手と戦えることがうれしい。頼もしいし、頼りがいがある」。W杯ではこれまでのように澤が頼られるのか。その可能性を引き寄せた開幕戦だった。【鎌田直秀】

 ◆女子W杯カナダ大会のなでしこジャパンのメンバー 5月上旬に23人が発表される。佐々木監督は、3月のアルガルベ杯メンバーから大幅な変更はないと明言している。澤は当落線上とみられ、佐々木監督は2月に「昨年末に(右膝を)ケガをしている。無理をさせて、大きなケガになってしまうのは困っちゃう」と話していた。澤以外では、膝痛で離脱中のFW岩渕(Bミュンヘン)が回復すれば復帰は濃厚。当落選上にいるのはアルガルベ杯に追加招集されたMF上辻(日テレ)、MF横山(長野)。アルガルベ杯前の国内合宿に練習参加したFW後藤(浦和)とDF薊(AS埼玉)。ケガから復帰したDF長船(浦和)MF猶本(浦和)ら。