浦和が2位の東京に圧勝し、開幕から11戦負けなしで首位を守った。序盤から球際の強さ、速いパス回し、ゴールに迫るスピード感で圧倒。点差が開いても、守備ラインを下げずに最後まで攻めきった。「Jリーグのレベルには満足できない」と話していた日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(63)も試合内容を絶賛した。

 Jを代表して、ハリルを見返した。浦和が東京を圧倒し、試合を終えた直後。スタジアムの関係者用エントランスで、視察を終えたハリルホジッチ監督が珍しく口を開いた。

 ハリルホジッチ監督 とてもいい試合をみることができました。これがサッカーの試合というものです。アグレッシブさ。プレーの質の高さ。さまざまな点をとっても、浦和はすごくいいプレーをしました。

 辛口の指揮官をして、そう言わしめるだけの圧勝劇だった。序盤から球際の強さで圧倒。FW興梠、MF武藤らが中央で相手を引き付けた上で、サイドに展開しながら一気に加速する攻撃もはまり、前半のうちにMF宇賀神の左クロスから2点を先行した。

 前節仙台戦では、3-1としてから守備ラインが下がって計4失点したが、同じ轍(てつ)は踏まない。「ズルズル下がらず、最後の笛まで前に出続けようと声を掛け合った」とDF槙野。最大の脅威だった東京FW武藤も守備に奔走させ、ゴールに迫る力を奪った。シュートわずか1本。見せ場すらつくらせなかった。

 司令塔のMF柏木は「完璧ちゃいますかね。特に前半はスキすらみせなかった」と胸を張った。意図せずとも、国内クラブを代表して、Jリーグの質をアピールする形になった。12日、代表合宿の夜のミーティング。ハリルホジッチ監督は選手たちに「今のJリーグのレベルには全然満足していない。このままでは私の理想のサッカーはできない」とあえて強く言った。

 翌々日には大々的に報じられ、日本中のファンが知るところとなった。やはりJリーグは欧州サッカーなどに比べ、見る価値はないのか-。そう思われてしまってもおかしくない、いわば「リーグの危機」で、浦和が意地を見せた。

 そもそも「球際の強さ」「縦への攻撃スピード」「アグレッシブさ」は、ハリル流として知られる以前から、ペトロビッチ監督が12年の就任以来こだわり続けてきたポイントだ。日本サッカーを引っ張るのは、何も代表だけではない。そんな気概を、抜群の試合内容で示した。【塩畑大輔】