浦和がMF武藤雄樹(27)の先制弾などで、2-0でシドニーFCに勝った。昨年のブレークで、今季からエース番号「9」を背負うアタッカーが、さっそく結果を出した。昨季の浦和はアジア・チャンピオンズリーグで開幕3連敗。早々に1次リーグ突破を困難にしてしまった。今季はそのリベンジとばかり、好スタートを切った。

 前半8分。武藤はMF梅崎のクロスが相手に当たったこぼれ球に、FWズラタンとともに猛然と寄せた。慌てた守備陣が、思わず「お見合い」をする。「梅崎さんにはあのタイミングで入れてほしいという話をしていた。だから動きだせていた」。こぼれ球を拾うと、角度のないところからゴールに流し込んだ。

 スタンドに駆け寄り、背中のエース番号「9」を両手で指し示す。「正直、ホッとしています」。重圧を「一発回答」で振り払った。敵軍ベンチには、仙台時代に武藤を重用したアーノルド監督。武藤は「昨日『ゴールを決めてみせるよ』と話したのですが、その通りに結果が出せてよかった」と笑った。

 昨季は仙台から加入すると、すぐに定位置を獲得。リーグでチーム最多の13得点を挙げた。8月の東アジア杯では日本代表入りも果たし、デビュー3分でゴールも決めた。しかし9月初旬のW杯予選では、日本代表から漏れた。

 その期間中、武藤は浦和のクラブハウスに栄養士を招いていた。「食事を見直そうと思って。上が見えてきたので、徹底してやりたいと」。数日分の自宅での食事メニューの写真を見せ、改善点の指摘を受ける。代表落ちにめげるどころか、さらなる飛躍への第1歩を踏み締めていた。

 11月のJリーグチャンピオンシップ準決勝G大阪戦では、1-1の後半ロスタイムに、右クロスの場面でファーサイドでフリーになる絶好機を迎えた。しかしヘディングシュートがGKの正面を突き、チームは延長で敗れた。

 宿願の年間優勝を逃し、自責の念にさいなまれながらも、新シーズンはあえて「9」を背負った。重圧を乗り越えてこそ、さらなる高みを目指せると考える。アーノルド監督からは試合後「グッドラック」と背中をたたかれた。武藤のサクセスストーリーは、新シーズンも続く。【塩畑大輔】

 ◆仙台アーノルド監督時代の武藤 アーノルド監督が仙台の監督に就任した14年から武藤は先発機会を増やした。手倉森監督時代の13年は主にスーパーサブとして起用され、リーグ戦の出場22試合のうち、先発は4試合だけ。ゴールも挙げることができなかった。14年の仙台は開幕から6戦勝ちなしと結果を残せず、アーノルド監督は4月に解任されたが、後任の渡辺監督も武藤を主にスタメンで起用した。結局14年の武藤はリーグ戦30試合(先発16試合)で4得点を決め、飛躍のきっかけをつかんだ。