浦和が狙い通りの「クオーターコートプレス」で、仙台から勝ち越し点をもぎ取った。

 後半29分、MF梅崎が左サイドから仕掛けた場面。司令塔のMF柏木がスッと前に上がり、ペナルティーエリア前のスペースを埋めた。さらにさりげなく手招きをして、左ボランチのMF阿部にも同様の位置取りを求めた。

 攻撃をしながら、同時にボールを失った際の守備網のバランスを整えていた。しかもその守備ブロックは、敵陣のゴールラインから30メートルほどの高さにつくられた。梅崎のクロスがカットされ、カウンターを仕掛けようと相手選手がドリブルで持ち上がろうとした瞬間、もう阿部は目の前まで距離を詰めていた。

 あっさりとボールを奪い返した時にはすでに、FW興梠が確信したかのように、相手最終ライン裏を狙って走りだしていた。阿部からのスルーパスに抜けだし、GKをかわして得点。この間、わずか5秒だった。

 序盤から、組織だったプレスで仙台を敵陣に押し込んだ。攻めてはすぐにボールを取り返し、また攻めてはすぐに取り返す。ピッチの奥の4分の1でプレーが続く時間帯まであった。仙台の懸命の守りで、前半こそ得点に至らなかったが、圧力をかけ続けることで堅守を崩した。

 試合後、ペトロビッチ監督は「世界を見ても最先端のモダンなサッカーができていると自負しています」とうなずいた。阿部はこの試合で、出場停止を受けずに100戦連続フル出場を達成したことからも明らかなように、ムダなファウルをせずにボールを奪って攻撃につなげる。

 そして柏木。司令塔の仕事は、華麗な左足パスで攻撃を組み立てることにとどまらない。この日の得点をお膳立てしたように、ピッチを俯瞰(ふかん)できる視野の広さを生かして、攻撃しながら守備網のバランスまで整える。

 2人の後方をカバーする、新加入のU-23日本代表主将、DF遠藤の集中力の高さも出色。力強いバックアップを得て、ダブルボランチの前への圧力は、昨季までよりもはるかに強まっている。コート4分の1に相手を押し込む、ペトロビッチ監督理想のサッカーが、いよいよ形になりつつある。