川崎FがFW大久保嘉人(33)の決勝弾でG大阪を1-0で下し、J1で00年の初対戦から11戦未勝利のアウェー戦で初勝利を挙げた。前半30分に貴重な決勝ゴールを決めた大久保は、自身のが持つJ1通算得点記録を162点に更新。チームは2位をキープした。

 大久保が負の歴史にピリオドを打った。前半30分。エリア内で一気にギアを上げた。DFの間を抜け、FW小林のクロスに飛び込み、頭でたたき込んだ。相手との駆け引きで上回り、J1通算得点記録を更新する162得点目の決勝弾に「理想の形だった。ふかさないようにだけ心掛けた」と振り返った。

 大久保にとってG大阪は、カード別で最多得点を奪っているお得意さまだが、川崎Fにとってアウェー戦は初対戦の00年から15年間、未勝利の鬼門だった。今季、会場が万博から市立吹田スタジアムに移ったとはいえ、エースは一抹の不安を抱えていた。「勝ててないから不安だらけ。難しい試合になると思っていた」。FW宇佐美と球際での競り合いで一時口論になるほど熱くなった。それも勝利を渇望するゆえの言動だった。防戦一方の終盤は自陣に戻って守備にも奮闘。「鬼門が1つ消えたのはよかった。この1勝は大きい」と安堵(あんど)した。

 試合前のメンバー紹介では「大久保」のコールに大ブーイングが起こった。相手サポーターを静まらせる痛烈な一撃をお見舞いし「ブーイングされてるからね、気持ちいいですよ」としてやったり。吹田は勝てなかった万博から南西に約1キロ離れているだけだが、勝ち点3を手に入れただけに気に入った様子。「観客席が近いしカッコイイ。自分にとっては最高のスタジアム」と笑みがこぼれた。

 今節は司令塔のMF中村がボランチでなくトップ下に入り、大久保-中村のホットラインで好機が生まれた。「先制点も憲剛さんからだった。近くにいてくれると助かるし楽しかった」と感謝した。首位浦和に食らいつく1勝にも「粘り強くやれているけど、まだまだ。これから真価が問われる」と慢心はない。【岩田千代巳】

 ◆大久保のJ1対戦カード別得点数 J1通算162点を対戦カード別に見ると、最多はG大阪で14点。2番目が清水と鹿島の11点となっている。G大阪にはC大阪所属時に6戦2発、神戸移籍後に9戦8発と量産し、川崎Fに移籍後も今回で5戦4発となった。大久保はこれまでJ1の26チームから得点を記録。対戦して無得点は札幌、山形(以上現J2)、福岡の3チームだけ。