鹿島が6連勝締めで第1ステージ(S)を制した。2位川崎Fと勝ち点1差で迎えたホームでの最終節。前半27分にDF山本脩斗(31)が先制するなど最下位福岡を2-0で下し、01年後期以来6度目のステージ優勝を遂げた。勝つためにピッチで“ケンカ”する伝統が復活。3連覇した09年以来7季ぶりとなる年間優勝へ、11月のチャンピオンシップ出場権と賞金5000万円を獲得した。

 強い。鹿島が、本調子ではなくても勝ち切った。本拠カシマでの「優勝」は07年のリーグ優勝以来。今季最多の3万1636人が詰めかけた聖地が、8年半ぶりに歓喜の舞台となり、優勝Tシャツを着た選手がビクトリーロードを歩いた。

 勝てば優勝の中、前半27分に先制した。右CK。MF柴崎が柔らかく浮かせるとDF山本が飛び込んだ。手前のDF植田が相手と競り合った背後でフリーになり、教科書のように頭でたたきつけた。ワンバウンドして力強くゴールに突き刺さる。軽々先手を取った。

 10分後に追加点だ。FW金崎が右サイドをドリブルで破り、DFとGKを引きつけてパス。FW土居が難なく合わせた。J1最少の17試合10失点を誇る守備陣に2点もあれば盤石。ホームで過去7勝1分けだった最下位の福岡を一蹴した。

 6度目のステージ優勝は最多タイ。年間、ナビスコ杯、天皇杯の全タイトルで国内1位になった。記録にふさわしい黄金期の姿が戻りつつある。14年に中田が引退、15年に本山が移籍。黄金世代が去り、他人任せだった姿勢が変わった。選手会長のDF西は4月の練習中に土居と怒鳴り合い、6月の神戸戦では金崎と口論した。「今までは嫌な気持ちにならないよう、みんな控えていた。でも変えないと」。チームに波及し、福岡戦2日前には20歳杉本と今季加入の28歳永木が声を荒らげた。強化担当21年目の鈴木常務は「かつての秋田とビスマルクのようだ」。試合を無視してでも問題解決した姿が重なった。

 ナビスコ杯の2連覇が消滅した5月には、昨夏のセレーゾ監督解任以来となる決起集会を開いた。金崎が提案。本人は当日に予定が入って参加できないオチがついたが、中堅がお膳立てし、最後は小笠原が「ズルズルいっていいのか!」と締めた。第15節で天敵浦和から6年半ぶりに勝利。物足りなかった自覚を原動力に、6連勝で優勝した。

 計18冠目の年間優勝を「義務」と位置付けるクラブにとって、前期Vは通過点だ。柴崎は「完全優勝できる権利は鹿島にしかないので第2Sも取る」。今季は創設25周年。まずチャンピオンシップ切符を得たが、黄金時代の再来に向けた序章でしかない。【木下淳】

 ◆鹿島アントラーズ 1947年(昭22)に大阪で発足した住友金属蹴球同好会が母体で、75年に茨城県鹿島町(現鹿嶋市)に移転した。91年に鹿島アントラーズと改称してJリーグの正会員になる。同年7月にジーコ入団。「アントラーズ」の名称は地元の鹿島神宮名物のシカにちなみ、枝角を意味する英語「アントラー」が由来。14年3月のJ1仙台戦で史上最速のリーグ戦400勝を達成。所在地は茨城県鹿嶋市粟生東山2887。井畑滋社長。

<記録的優勝アラカルト>

 ▼6度目のステージ優勝 鹿島のステージ優勝は01年の第2ステージ以来、通算6度目で磐田の6度と並び最多タイ。J1年間優勝7度、ナビスコ杯優勝6度、天皇杯優勝4度も最多。

 ▼サイド攻撃機能 クロスからの得点が今季リーグ最多10点。「データスタジアム」の調べで、クロス成功(味方に合った回数)は86本でリーグ1位、成功率26・3%もトップだった(16節時)。昨季のクロスからの得点は34試合で12点だったが、今季はサイド攻撃が威力を発揮した。

 ▼GKセーブ率1位 ベテランGK曽ケ端の安定感が光った。GKセーブ率はリーグ1位の79%で、チームの10失点もリーグ最少だった。無失点試合9度は、昨季第1ステージを無敗で制した浦和の6度を上回った。