心労による体調不良で石井正忠監督(49)がベンチ入りしなかった鹿島が、敵地で横浜と2-2で引き分けた。大岩剛コーチ(44)が監督を代行し、前節20日の湘南戦で石井監督と衝突していたFW金崎夢生(27)が先制アシスト。6連勝中だった横浜に逆転されるなど苦しんだが、執念で追いついた。石井監督は辞意を示したとみられ、今後は流動的。週明けにも大岩コーチの昇格を軸に、監督が交代する可能性も出てきた。

 試合にも石井監督の姿はなかった。練習を休んだ前日だけでは立ち直れず、ジャージー姿の大岩コーチが監督を代行。普段はスタンドから戦況分析する柳沢コーチもベンチに入り、総出で指示した。「こういう時こそ一丸にならないと」。前夜、宿舎で小笠原主将が引き締めたチームは前半28分に先制する。指揮官が戦列を離れる一因となった金崎がアシスト。石井監督がデビューさせた20歳の鈴木が1得点1アシストした。

 鹿島が監督代行を立てるのは、クラブ初の解任劇があった99年(ジーコ総監督)以来17年ぶり。異例の事態は前日26日に発生した。強化責任者の鈴木常務が「前々日まで兆候がなかったのに」と驚く中、複数の関係者によると、石井監督は成績停滞に悩み辞意を示したという。「心労による体調不良」として練習を回避。自宅に帰された。

 クラブは復調を待ったが、この日午前9時前に「体調が戻らない。無理です」と電話が入ったため断念した。石井監督は7~8月の公式戦4連敗など第2ステージ(S)は9位で、前節までの2連勝も年間18位の福岡と同17位湘南が相手の辛勝。優勝した第1Sからの落差に責任を感じていた。“とどめ”が湘南戦。交代時に、金崎から握手を拒否された。

 鹿島の黄金期を知る大岩コーチは、緊急登板にも浮足立たなかった。今季復活したサテライトリーグの指揮経験から、冷静に仁王立ち。途中出場させた伊東の右クロスを起点に、同じく途中出場のファブリシオが同点弾を決めた。「自分たちがやってきたことを思い出そう」と送り出し、最低限の勝ち点1をつかんだ。

 いわばクラブの伝統で今節はしのいだが、状況は流動的だ。鈴木常務は29日にも石井監督と会談する。昨季のナビスコ杯と今季の第1Sを制し「代える成績ではない」としながらも「あらゆる状況を想定しないと。先延ばせばチームが停滞する」と、翻意に失敗した場合の交代を示唆。大岩コーチの正式昇格を軸に、年間3位では異例の監督交代を迫られる。【木下淳】

 ◆コーチが監督代行 鹿島は体調不良でベンチ入りしなかった石井監督の代わりに大岩コーチが指揮。ベンチ入り停止や成績不振での監督が交代したことによる暫定措置以外でコーチが指揮を執ったのは、最近では11年7月の広島がある。ペトロビッチ監督(現浦和監督)が右膝の負傷でチームを離れ、横内コーチがリーグ戦2試合を指揮。Jリーグは記録上、この間もペトロビッチ監督の采配試合として集計し、今回の石井監督のケースも同監督の41戦目のJ1リーグ戦采配試合としてカウントされる。