藤枝明誠が3-2で浜松開誠館を退け、7年ぶり2度目の全国選手権出場を決めた。1点を追う終盤、就任2年目の松本安司監督(47)が築いた「超攻撃サッカー」が本領を発揮。後半28分にオウンゴールで同点とすると、同36分にFW遠野大弥(3年)が決勝点を決めた。全国選手権(12月30日開幕)の組み合わせ抽選会は、明日21日に都内で行われる。

 エコパスタジアムが、藤枝明誠の歓喜にあふれた。松本監督は、大応援団と選手たちが待つバックスタンド前へゆっくりと歩いた。満面の笑みを浮かべ、教え子の輪に加わると、4度宙を舞った。「よく延長前に決着をつけた。この子たちは本当に強い。よくやってくれた。それしか言葉がないです」。

 昨年、田村和彦前監督(現静清監督)からバトンを受け、12年間務めたコーチから監督に昇格した。1年目は、県総体で4強進出したが、県選手権では決勝トーナメント1回戦で敗退。「田村さんが19年間かけて築いてきた『攻撃サッカー』を守ろうとしすぎてしまった」と反省した。

 かつて浦和のFWだった指揮官は2年目の今季、「超攻撃サッカー」をテーマに掲げた。トップ下だったMF丹羽一陽(3年)をボランチで起用するなど、攻撃的な選手を多く配置した。4トップも採用。どこからでも点の取れるチームを目指した。

 この日も、土壇場で「超攻撃サッカー」が生きた。1点を追う後半28分、左サイドを起点にFW遠野が強烈なシュートでオウンゴールを誘発。同点とし、同36分にも遠野がドリブル突破から右足で勝ち越し弾をたたき込んだ。残り12分間での逆転劇。遠野は「焦りもなかったし、負ける気もしなかった」。1年間かけて成熟させた「点の取れるチーム」の強みだった。

 ただ、県の頂点も通過点と位置付けている。同校のグラウンドに掲げた横断幕には「王国復活」と記されている。松本監督は、県勢21年ぶりの全国制覇を懸けた舞台を見据えて言った。「まだ(超攻撃サッカーは)7~8割程度しか完成していない。残り1カ月。静岡代表として期待されているものは分かっています。全国にインパクトを残せるようにしていきたい」。目指すゴールは、まだ先にある。【前田和哉】