元日本代表監督で、日本協会副会長の岡田武史氏(60)がオーナーを務めるFC今治(四国)が来季のJFL昇格を決めた。第1試合でヴィアティン三重(全国社会人3位)に3-0で快勝。2連勝で首位に立つと、第2試合の結果を受けて昇格条件の2位以内が確定した。経営2年目。昨季は1次ラウンド(R)で敗退したが、日本の5部相当の地域リーグから4部の全国リーグに上がった。12月7日のJFL理事会で承認され、正式決定。来季はJ3を目指す。

 JFL昇格が決まった瞬間を、岡田オーナーは観客席で迎えた。第1試合で三重に勝って王手をかけ、観戦した第2試合で2位以内が確定。表情は崩さずに吉武監督と握手したが「ホッとしてます」と本音が漏れた。会場は、岡田氏がコーチとしてJ元年を迎えた市原の本拠だった。原点の地での三重戦は後半にチーム2点目が決まると、両拳を握った。応援に来たラモス瑠偉氏らの前で、変わらない勝利への執念を見せた。

 「必昇」が合言葉のオーナー2季目だった。昨季は1次Rで敗退。その4時間後に緊急ミーティングを開き、背水の今季はチーフ・メソッド・オフィサーの肩書で現場復帰。約2年半ぶりにベンチ入りした。ピッチ外では、スポンサー回りに日本協会副会長を兼務。月6回ほど関東と四国を往復し、練習にも週3回は顔を出した。「全国地域チャンピオンズリーグ(CL)が勝負どころ。ここを乗り越えられれば、来年はベンチなんか入る気ない」。それほど今季に懸けていた。

 選手は前年から17人も入れ替えた上で、新たな指揮官に、11年U-17(17歳以下)W杯8強の吉武監督を据えた。愛媛・今治市内に借りた一軒家ではミーティング漬けの共同生活を送った。中0日の3連戦が2段階ある全国地域CLに向けては、週末のリーグ戦の翌日に試合を組み、2日連続起用。1年かけて心身を鍛えた選手が、1試合を残してJFL切符をつかんだ。

 バルセロナなどの一貫指導法を基に、日本人の組織力を最大化する「岡田メソッド」の構築は「まだ2、3割」(吉武監督)と理想には遠いが、立ち止まれない。オーナー就任時に掲げた目標は「10年後にJ1で優勝争い」。残り8年だ。JFLから最短1年でのJリーグ参入へ、岡田氏は「できれば来年J3に上がりたい。すぐにでも経営強化や選手補強に取り組みたい」。早くも来季の青写真を描き、戦いの舞台を四国から全国に移す。【木下淳】

 ◆FC今治 1976年(昭51)に前身の「大西サッカークラブ」設立。09~11年はJ2愛媛の下部組織「愛媛FCしまなみ」として活動した。14年11月に岡田氏がクラブ運営会社の株式の51%を取得。本拠は愛媛県今治市の桜井海浜ふれあい広場サッカー場。

 ◆JFL(日本フットボールリーグ) 前身は日本リーグで99年に現行の第1回が行われた。J3の下に位置するカテゴリーで今季は16チームが参加。J参入には、J3クラブライセンスの交付を受けた上で1試合平均2000人の観客動員など諸条件を満たし、JFLの4位以内かつ「百年構想クラブ」(今治は今年2月に認定)の上位2チームに入る必要がある。今季は2ステージ制で行われ、前後期の1位が戦うチャンピオンシップの勝者が年間1位、敗者が同2位、3位以下は年間勝ち点で決定。