J2横浜FCのFWカズ(三浦知良)が「伝説の男」となった。50歳7日で迎えたアウェーV・ファーレン長崎戦に先発出場し、後半9分まで54分間プレー。「全選手の手本」と尊敬された元イングランド代表スタンリー・マシューズ氏の50歳5日の公式戦出場記録を上回った。だが、シュート0本で試合も1-1の引き分けに終わり、満足な表情は一切なし。史上初の50歳弾も、次節以降に持ち越しとなった。

 カズは50歳7日でピッチに立っても、満足する気持ちは1つもなかった。小学生時代には「マシューズ」と叫びながらフェイントで抜いた記憶がよみがえる。だが、偉大な記録更新に盛り上がる周囲とは裏腹に、自身は冷静だった。

 「我々にとっては伝説の人ですよね。50歳を超えるまでやったというのは聞いていましたけれど、実際にプレーを見たことはあまりない。数字的なことよりも、やっぱり内容が大事だからね。伝説な選手を超えたなんて、思えないですね。今日出たことで僕のほうが長くやっているというところはあるかもしれないですけれど、実績とキャリアに関しては超せないです」

 50歳の誕生日に迎えた開幕戦に続く先発は「相手DFと無理な体勢で競り合うシーンばっかりだったかな。見せ場もなかったし特に何もない」と、自己採点は険しかった。ゴール前でボールに関わったのは、前半終了間際にCKのボールを頭で折り返した1回のみ。守備での貢献度は相変わらず高いが、シュート0本。同点に追いつかれたこともあり、笑顔はなかった。

 このオフも年末年始で2回に分け、計31日間のグアム自主トレを行った。シーズン終了後、休む間もなく朝5時半起床の4部練習で体を鍛え抜く。だが自主トレでチーム始動合流に遅れることや、別メニューで調整することにチーム外から「特別扱いしすぎでは? 示しがつかないのでは?」と疑問の声が上がったこともある。中田監督は「50歳間近までプロ生活を続ける方法をカズしか知らないでしょ。だから認めるんです」と納得させた。カズ流はチームの誰もが敬意を表し、同僚もその姿から学ぶ「伝説」だ。

 不完全燃焼な気持ちを次につなげるのもカズだ。「試合にコンディションを合わせ、ずっと調整してきている。今のリズムであれば試合は間に合う」。次節は12日のホーム、ザスパクサツ群馬戦(ニッパツ)。史上初の50歳弾は「伝説弾」になる。