なでしこジャパンの主力として11年W杯優勝などに貢献したDF近賀ゆかり(32=中国・杭州)が20日、海外移籍後の体験について語った。現在は神戸市内で古巣のINAC神戸の練習に参加中。昨年10月には、INACからオーストラリアのキャンベラ・ユナイテッドに完全移籍。同国リーグのオフシーズンを利用する形で、今年2月から杭州へ加入している。

 元チームメートと約2時間汗を流した近賀は「中国リーグが(中国全国運動会予選のため)中断中で、INACでやらせていただいています」とさわやかな笑顔で経緯を説明した。5月のゴールデンウイーク明けの合流に向け、INACでトレーニングできる環境に感謝を示す。なでしこジャパンとして臨んだアジア最終予選(昨年2~3月)でリオデジャネイロ五輪出場権を逃し「アジアを勝ち抜くのは大変と分かっていたつもりだったけれど、五輪を見ていても寂しさがあった。オーストラリアが、なんか気になるんです」と語った昨年10月の移籍会見。オーストラリアでは予想通り、発見の連続だった。

 「私のチームは女子サッカーではあまり見られない3バックだった。いい勉強になった。会場は全体的に小さいけれど、観客との距離が近い。男子とダブルヘッダーにすることで、テレビ放送もある。日本で男子のJリーグと絡めるのがいいかは分からないけれど、そういうのも1つなのかなと勉強になりました」

 自らの目で見て、感じることの意味を痛感し「(オーストラリアに)行った後に(昨年の五輪)予選をやりたかったな…」と漏らす。今年に入って舞い込んだ中国からのオファーにも「サッカー以外にもいろいろと経験するため」と挑戦を選んだ。中国でも「聞いていたよりも、親日で、みんな日本に興味がある。自己中心的じゃなく、私に対しても(向こうが)いいと思ったことは、すぐに行動でやってくれる」。今冬にもう1度オーストラリアへ戻ることを希望しており、ここからも独自の道を歩む。

 言葉に苦労し「中国では通訳がいるんですが、向こうの選手はどんどん中国語で話してくる。理解は…。どうやって理解しているんでしょうね?」。自分でもそう言って笑うほど、戸惑いだらけの毎日を過ごす。それでも最後には言い切った。「海外にいると、いろいろな人に出会う。いろいろな指導者もいるし、クラブの作り方も気になる。これ(経験)で終わりにならないように…。これを(将来に)生かしたいですね」。日本でエネルギーを蓄え、再び海を渡る。【松本航】