公式戦3連敗中だった浦和レッズが日本代表DF槙野智章(30)のゴールなどで6-1でアルビレックス新潟を一蹴し、首位に返り咲いた。母の日に、槙野は、広島の実家で観戦する母令子さん(58)に贈った花に自身のゴールを添える孝行息子ぶりだった。

 Jリーガーにしかできない母の日の贈り物がある。役者の浦和槙野は心得ていた。2-1の前半31分。柏木のFKに飛び込み、右足でねじ込んだ。立ち上がると親指と小指を開いて耳元に当てる電話のポーズ。広島時代、幾多のゴールパフォーマンスを演出し演じてきた男の動きはJリーグの魅力の1つ。見逃すと損をする。この日は母の日の特別バージョンだった。

 「今日の試合を見ていると言っていたので、グラウンドから電話して『ゴール決めたよ』と伝えました。届いたと思います」とさわやかに笑った。11日に30歳になった。大人の男は、母への感謝を忘れない。「30歳になって1発目の試合というより、母への感謝の気持ちを持ってプレーしました。昨日、僕が決める夢を見ていたので、正夢になりました」。いつも以上に口は滑らかだった。

 母の日にはずっと花を贈ってきた。朝から晩まで仕事で忙しい母を思い、水をやったりする手間をかけるのが申し訳ないと、あえて造花をチョイスしていた。だが「枯れないんだね」と驚く母の天然のかわいさに触発され、今年は生花を手配。数万円するシロモノだが金額は問題じゃない。花束に、手紙より、リボンより価値のある、勝ちにつながるゴールをつけて感謝の気持ちを示した。

 首位から陥落した前節鹿島戦ではDF森脇が「くさい」と侮辱的な発言をし、2試合の出場停止処分を食らったばかり。起こしてしまった事の重大さは受け止めつつ、重苦しいムードを槙野はじめ武藤、興梠、関根、遠藤と5人もの息子の母の日弾で払拭(ふっしょく)。お得意様の新潟相手にリーグでは22戦負けなし(17勝5分け)とした。“チームの父”、ペトロビッチ監督だけは「内容は非常に不満」と渋い表情だったが、ひとまず定位置!? の首位に返り咲いた。【八反誠】