J2で4位だった徳島ヴォルティスの6年ぶりのJ1復帰はならなかった。試合後、スペイン人のリカルド・ロドリゲス監督(45)は「湘南が(1-1のスコアでも残留できる)アドバンテージを生かした。我々は1点及ばなかった」と現実を受け止めた。

その上で、プレーオフの現状のルール変更を冷静に訴えた。

「このシステムはJ2には不公平だ。我々は(プレーオフを含めて45試合を戦い)22勝した。湘南ベルマーレは(34試合で)10勝しかしていない。もう1度再考した方がいい」。徳島はプレーオフで3試合を戦い1勝2分け。最後はJ1のホームで戦い、引き分けではJ1クラブが残留というルールに泣いた。

試合は前半にMF鈴木徳真(22)のゴールで先制し、J1復帰が確実に見えてきた。3-4-3システムで自陣でしっかり守り、高い位置で球を奪うと速攻でゴールに迫る。個人技に頼ることなく、組織で戦い抜く徳島らしいサッカーだった。

だが後半19分に同点を許した。迎えた後半ロスタイム、ドリブルからMF鈴木徳が右足で放ったシュートは、右ポストのわずか数十センチ横に外れた。入っていれば事実上、昇格となる勝ち越しゴールだった。

「2点目が必要なのに決めきれないのは実力なのかなと思う。練習で決めても意味がない。勝てたじゃなく、勝ったかどうかが大切。湘南は最後はいい守備をしていた」。鈴木徳は「引き分け=敗退」の事実を冷静に受け止めた。

就任3年目のロドリゲス監督が率いる徳島の快進撃は見事だった。J2リーグ戦は残り15試合で11勝3分け1敗。プレーオフを合わせると残り18試合でわずか1敗だけだ。

J2優勝で自動昇格した柏レイソルは、昨年の人件費が約28億円だったが、スター選手のいない徳島は約9億5000万円。「身の丈経営」をうたい、個人に頼ることなく組織で勝負してきたクラブの意地だった。

クラブの強化本部岡田明彦本部長は来季へ、ロドリゲス監督の続投を含めて選手を極力残したいという。だが監督や選手の評価も他で上がっていることで「J1に出たい選手やそれだけの価値がある選手、野心を持った選手が多い。できるだけ選手を残しながら、個に依存するのではなく、組織として今までやってきたことを継続していきたい」と来季への編成方針を説明した。

主将のMF岩尾憲(31)は「ここまで来られて仲間には感謝したい。サポーターには申し訳ない気持ちでいっぱい」と話した。徳島といえば熱烈サポーターだった俳優大杉漣さんが、18年2月に急性心不全で66歳の若さで急逝。クラブとして「18年シーズンを戦い、よい結果が報告できるように全力を尽くす」とコメントしていたが、大杉さんへの喜びの報告も来年以降にお預けとなった。