<J1:札幌3-0千葉>◇第16節◇13日◇フクアリ

 札幌がエースの2発で“逆頂上対決”を制した。17位のコンサドーレ札幌がアウェーで最下位の千葉と対戦し、3-0と快勝した。FWダビ(24)が前半13分に25メートルのミドルシュートを決めると、後半15分にはカウンターから貴重な追加点を奪い、5月10日の大宮戦以来、リーグ戦で64日ぶりの白星をもたらした。今季チーム最多の3ゴールを奪えば、守備陣も今季リーグ戦16試合目にして初完封。負ければ最下位転落のがけっぷちをひとまず抜け出し、J1残留に向けハードルを1つ、乗り越えた。

 最後はベンチで勝利を見守った。2得点を奪ったダビは久しぶりの勝利をかみしめると、夜空を見上げた。スタンドからサポーターの「ダ~ビ」と泣き声にも似たコールが続く。喜びがこみ上げてきた。選手たちと抱き合った。「今までの自分の中でも1番の内容」。下位2チームによる逆頂上対決、J1残留へ前半戦最大の山場となる1戦は、心地よいまでの快勝だった。

 開始2分、中山の“号砲”のようなゴールでエースが目覚めた。同13分、平岡からのパスを受けたダビが、ペナルティーエリア外から左足を振り抜いた。「シュートで終われ」。三浦監督の指示が頭をよぎった。中断明けからボールを持ちすぎるクセを指揮官に矯正された。その効果が出た。

 25メートルのミドルシュートがゴールネットに突き刺さった。一瞬、度肝を抜かれた会場で静寂が広がるほどの圧倒的なシュートだった。後半はカウンターから、利き足とは逆の右足でボレーシュートを決めた。「1対1は外すが、難しいシュートはうまい」という指揮官の不思議な評がそのままの技ありゴールだった。

 この日、パスの供給源MFクライトンが累積警告で出場停止。それだけではなく、相棒のアンデルソンも左足の付け根を負傷し、前半でピッチを去った。そんな窮地にも負けなかった。「2人がいなかったが、良い試合を何とかできた。守備の力があって攻撃につながった」と周囲をたたえた。

 

 中断期間中に、少ない強化費の中から2選手を補強した。箕輪獲得が第1優先。三浦監督は言う。「チームの柱にFWはダビ、MFはクライトンを据えた。そしてセンターバックに1人の核がほしい」。その期待に応えるように、守備の主軸として期待される新加入の箕輪がDFラインで踏ん張って完封した。そしてエースがゴールネットをこじ開けた。攻守の主軸が役割を果たせば、勝利が近づくことがこの試合で証明された。

 この日の試合前も相棒と連係を深めていた。携帯型ゲームのサッカーソフトで試合直前までアンデルソンと対戦してリラックス。普段はクライトンとエジソンが加わり、部屋でサンバをかけながらゲーム大会で盛り上がる。札幌の“先輩”としてラーメン店などにも一緒に行く。ダビは常に2杯を完食。夏バテを感じさせない動きの源だ。

 エースの活躍でJ1残留の第1ラウンドは制した。しかし、戦いは終わったわけではない。順位は16位と勝ち点差4の17位と依然としてJ2降格圏に位置する。「次も勝つことが大切なんだ」。ダビの言葉が選手全員の気持ちを代弁していた。【上野耕太郎】