<J1:鹿島2-0横浜>◇第18節◇20日◇日産ス

 鹿島の中田浩二(29)が、古巣復帰後初先発となった横浜戦で、チームを完封勝利に導いた。MF登録だがセンターバック(CB)に入り、対人の強さと冷静な状況分析で横浜の攻撃を封じ込めた。チーム内の競争を活性化する活躍で、21日の浦和の結果次第では2戦ぶりに首位奪回できる位置につけた。岡田ジャパン初選出も期待される男が、鹿島に追い風を呼んだ。また北京五輪代表の選手にとっては、今節が本番前最後のリーグ戦となった。

 中田はクールに仕事をやり遂げた。2-0の後半9分、ゴール左を突くスルーパスも読み切ってカバリングした。前半に古傷の右ひざを打撲した上、バーゼル所属時の4月6日のスイス杯決勝戦以来の先発で、終盤は体力も限界に。ベンチからの交代打診を素直に受け入れた。

 「疲れている自分が出て1点取られるより元気な剛ちゃん(DF大岩)に代わった方が確実」。04年11月名古屋戦以来1330日ぶりに、鹿島でのリーグ戦に先発した。フル出場したいエゴを捨て、チームの勝利を優先、前節京都に敗れた悪い流れを断ち切った。

 28日からの代表候補合宿を前にアピールできた。J復帰目前の上旬には「せっかく日本に帰ってきたから」。招集が限定される欧州時代と違い、国内組としてのメリットを強調。岡田ジャパンへの選出にも意欲的だ。この日は大熊コーチが視察する中で、完封勝ちの原動力となった。

 チームにもたらした「中田効果」はこの日だけでない。復帰話が持ち上がった06年秋から、約2年続いている。07年1月にはクラブの発行物にも獲得構想が幹部のコメントとして書かれ、当時ボランチで伸び悩んでいた青木は「浩二さんが戻ればポジションはなくなると思う。でも帰ってきた時に経験を分かち合えれば」。刺激を受け、危機感を募らせ、急成長した。そして、中田のボランチ起用構想を白紙に戻させた。その場にいなくても中田の存在が、チームの底上げにつながった。

 中田も競争を受け入れた。「今出ている選手がポジションを取っているわけではない。取ったら譲りたくないという思いもある」。高原、三都主ら欧州からの復帰で苦労する選手も多い中、順応性の高さを示した。「もともといたチームだし、入ることはそうは難しくない」。鹿島にとって、日本サッカー界にとって、頼もしい男が戻ってきた。【広重竜太郎】