<J2:横浜FC2-2愛媛>◇第41節◇25日◇ニッパ球

 横浜FCのFWカズ(41=三浦知良)が、Jリーグ16年連続ゴールを決めた。愛媛戦の後半10分、右サイドから切れ込んで2-2とする今季初得点。93年のJリーグ発足以来毎年積み重ね、通算得点も磐田FW中山雅史(41)の157点に次ぐ150点となった。41歳7カ月29日での得点は、元鹿島MFジーコを抜いて最年長。日本サッカーとともに歩む「元ストライカー」が、その代名詞とも言えるゴールで偉大な記録をつくった。

 11番が、スタンドの興奮を背に走った。1-2で迎えた後半10分、カズは右サイドからゴール前に進入した。2人のDFをかわした後、バランスを失い転倒。横になりながらも右足を振り抜くと、ボールはGKを抜いて逆サイドのネットに吸い込まれた。「ゴ~~ル!」のアナウンスが大歓声にかき消された。

 「入る気がした。ゴールへの道が見えた」。倒れながらのシュートを振り返った。「勝てなくて残念」と言いながらも、16年連続に「長いことやっているからね」と照れ、J最年長でのジーコ超えには「いいこともあるね」と笑った。

 執念だった。今季はFWではなく、ゴールからは遠い右MFとしてプレー。チームも不調で、守備の負担が増えた。「今はFWじゃないから、ゴールへの執着はない」「チームが勝てばいい」。周囲の期待に困惑し「ゴールだけがサッカーじゃない」とも言った。しかし、根はストライカー。最もゴールを期待していたのはカズ自身だった。

 焦りはあった。1人黙々とPK練習し「PKはオレに」とアピール。「今年はゴールは無理かも」と、寂しげに漏らしたこともあった。得点への思いが、倒れながらの泥臭いシュートを生んだ。「カズらしい。あれはストライカーの本能」と、都並監督は言った。

 この日、試合前に自らのブログに「楽しもう」と書いた。それこそが、カズの原点だ。W杯予選を戦う日本代表へ「楽しんでほしいね」と言った。型にとらわれてゴールが決まらない代表選手へのエールでもあった。目の前に相手がいたら勝負して抜く。最後はシュートで終わる。41歳になっても、カズはそんなシンプルなプレーを楽しむ。

 後半22分の交代時には、スタンドが総立ちで拍手した。23歳の新人MF八角は「特別なゴール」と言い、MF滝沢は「アシストしたかった」と悔しがった。チーム全員が重なり合って喜び「ダンスどころじゃなかった」とカズ。「記録を続けられて良かった」と本音を言って、キングは楽しそうに笑った。【荻島弘一】