今季限りで磐田を退団する元日本代表FW中山雅史(42)が、J2札幌を移籍先の最有力候補として前向きに検討していることが2日、分かった。中山の代理人であるARSの高井竜司氏(46)がこの日、獲得オファーを出している札幌の強化担当者と初交渉を行った。J2熊本やJFL町田ゼルビアとも交渉しているが、昨年までJ1だった札幌の医療面での充実した環境に好印象を持ったようで、42歳という年齢を考慮し、前向きに交渉していく姿勢を見せた。一気に移籍が決まる可能性も出てきた。

 複数の関係者によると、中山の代理人の高井氏がこの日、札幌側と初交渉した。前向きな話し合いに終始したようで、高井氏も「思いのほか高い評価を頂いている」と認め、札幌が移籍先の最有力候補に急浮上した。実は中山が11月9日に磐田から戦力外を通告されて以降、複数のクラブから獲得オファーが届いたが、真っ先に手を挙げていたのが札幌だったという。

 来年で43歳を迎え、プロサッカー人生16年で多くの古傷を抱える中山は、移籍先の条件として医療面の充実を最優先している。退団決定直後にも「サッカーへの情熱がなくなることはない。だけど、医療面での不安は正直ある」と話していた。札幌は専用クラブハウスを持ち、3人のトレーナーが常駐し、ドクターもいる。10月には総工費約5億円をかけた、いつでも使用可能な室内サッカー場もオープン。関係者も「環境面ではJ1の他のクラブにも見劣りしない」と胸を張る。一番の懸念事項だったメディカル面での問題が解消したことで、中山も札幌へ気持ちは傾いたようだ。

 一方で札幌はJ1再昇格へ中山のキャリアに大きな期待を寄せている。今季は若手中心のチームで臨み、現時点で6位とJ1昇格を逃した。「成績に波があったのが要因」と矢萩竹美社長。そこでチームの精神的支柱として中山に白羽の矢を立てたようだ。サッカーに取り組む真摯(しんし)な姿勢を、若手の刺激にしたいという狙いもある。J1通算157得点を挙げている得点力には、エース候補として期待している。

 今後は各クラブから条件提示を受け、金銭面のほか環境面を考慮した上で、最終的な判断を下す。高井氏も「オファーを受けている全クラブと話をし、5日の最終節が終わってから中山本人がクラブ側と直接話し合っていきたい」と話した。しかし、どこよりも早い段階で、社長以下、フロントや監督がゴーサインを出し、中山獲得に乗り出している札幌が最有力。移籍が決まっても歓迎ムードで迎えられる。その熱意は本人にも伝わっているはずだ。

 中山にとって、新たな1ページを加える挑戦だ。年齢とともに出場機会が激減し、人生初の戦力外。それでも、現役への強い意志は衰えず、現役続行を決意した。「サッカー選手ゴン中山」の第2ステージが、見え始めてきた。