<J1:清水2-1鹿島>◇第17節◇7日◇アウスタ

 首位攻防戦の突破口を開いたのは清水FW藤本淳吾(26)の左足だった。清水が藤本の先制弾、MF枝村匠馬(23)の勝ち越し弾で鹿島を破り21日ぶりに首位に再浮上した。今季3トップの一翼を担う藤本は自己シーズン最多タイの8得点目で、FW岡崎とチーム得点王に並んだ。先制点は自ら放ったFKがファウルを誘いPKで奪った。正確無比、変幻自在の左が得点源となっている。

 ゴール裏に陣取った、鹿島サポーターのブーイングを受けながら、藤本は冷静だった。前半37分。PKをゴール右隅にきっちり決めた。自身初となる3戦連続のゴール。序盤から攻め続けながらゴールを割れなかったチームを勢いづける1発だった。試合後は、チームメート、大歓声のサポーターとともに、勝利のロコロコダンスを踊った。「この1週間、勝つことだけを考えてトレーニングしてきた。よかったです」と静かに笑った。長谷川健太監督も「あの時間に先制点を取れたことが大きかった」と振り返った。

 序盤から好調さを見せつけた。CKからは絶妙なクロスを上げ、PKによる自身の得点も、直前に左足から放ったFKが、ゴール前で相手のファウルを誘ったものだ。後半開始早々には、ドリブルから果敢に相手ゴールに迫った。90分、最後まで、走り抜き、鹿島を惑わせゴールを脅かし続けた。

 今季、チームのシステム変更により、MFからFWへコンバートされた。不慣れなポジションへ順応するため、テレビや自分のプレーを録画した映像で再三FWの動きを確認した。この日のゴールでリーグ戦自己最多タイ、今季チーム最多タイの8得点。シーズン前に設定した10得点まで、シーズン折り返し地点で、早くもあと2点まで迫る。それでも「まだ半分あるし、どうせだったら行くとこまで行く」と力を込めた。

 王者鹿島を撃破し、チームは前半戦を首位で折り返した。自身も好調を維持。それでも「まだ、半分ある。ほとんどが難しい試合になる。もちろん自信は必要だが、反省するところはしないといけない。満足するのはシーズンが終わってからでいい」。入団当時から「背番号10」を背負い続ける男が、首位清水を引っ張り続ける。【前田和哉】