<J1:神戸4-2G大阪>◇第28節◇30日◇万博

 神戸FW大久保嘉人(28)が泣いた。左太もも裏に軽い肉離れが見つかり、試合直前に急きょ欠場が決まった。試合に出られないふがいない気持ちを抱えながら観戦し、11試合ぶりの勝利を見届けて仲間の元にかけつけると感極まって涙した。「ずっと勝てなかったし(試合に出られない)自分の責任もあったしね。負けたら(残留が)本当に厳しくなる。終わっていたかもしれんから。そう考えたら涙が止まらなくなった」。

 苦しさと、寂しさ-。さまざまな感情があふれ出てきた。10月6日に祖父吉田誠一さん(79)が他界した。危篤の一報を受けた9月にはオフを利用して福岡の実家に戻り、丸3日も病院のベンチで寝泊まりして看病を続けた。負けん気の強い性格になったのは、九州男児として祖父の教えがあったから。天国に旅立つと、葬儀には出席せずに練習に没頭した。幼少時代、じいちゃんは試合に勝つと褒めてくれた。それを思い出したから、勝ちたかった。

 次節仙台戦(11月6日)は、強行出場する見通し。和田監督就任後6戦目の初白星になったが、まだJ2降格圏の16位。苦しい状況は変わらない。「次は絶対に出る。いつまでも休んでいられん」。大久保はそう言って、大好きな「じいちゃん」がいる夜空に輝く星を見つめた。【益子浩一】