<プレナス・チャレンジリーグ:仙台レディース3-0静岡産大磐田>◇第19節◇14日◇石巻運動公園サッカー場

 仙台レディースが被災地・石巻に笑顔を届けた。周辺に仮設住宅が立ち並ぶグラウンドで静岡産大磐田に快勝し5連勝。17勝2分けで勝ち点を53に伸ばした。2位の高梁吉備国際大も勝利したため、勝ち点差4は変わらないが、早ければ21日の次節アウェー鹿児島戦で優勝を決める可能性が出てきた。

 指揮官の思いが伝わった。試合前、石巻市出身の千葉泰伸監督(41)は「被災地で試合をすることを意識してほしい」と選手を送り出した。シュート25本を放ちながら3得点と苦しんだが、地元凱旋(がいせん)試合を勝利で飾った千葉監督は「特別な試合で、少し硬さが出たかな」とホッとした表情。試合後には、小学生時代に所属した渡波サッカースポーツ少年団の恩師から花束を受け取り、笑顔を見せた。

 石巻運動公園は震災後、自衛隊の活動拠点になっていた。敷地内の野球場やフットボール場は、芝生の入れ替えのため使用できない。周辺の仮設住宅には「家が流された兄が、しばらく住んでいたんです」(千葉監督)。集まった2498人に笑顔を届けたい。思いは1つだった。

 勝利のために夢中で飛び込んだ。後半10分にCKからチーム2点目を決めたMF高橋奈々(23)は「よく覚えていない。(髪の毛を結んだ)お団子に当たったかな」とGKと競り合いながらの得点を振り返る。会場には勤務先であるセルコホームの石巻展示場スタッフが制作した、大漁旗ならぬ「大量得点祈願旗」がなびき「力になりました」と献身的な動きで貢献した。

 仙台が東京電力マリーゼの選手を受け入れることが承認されてから、ちょうど1年。早ければ次節にも優勝が決まる。白幡洋一社長(68)は「(観客席が)1000席以上あれば試合ができる。また石巻でやれるようにお願いしている」と来季の開催にも前向きだ。今度は1部で石巻に帰ってくると約束した仙台レディースが、Vへのラストスパートに入る。【鹿野雄太】

 ◆仙台レディースの最短優勝条件

 21日のアウェー鹿児島戦で勝利すれば勝ち点56。2位の高梁吉備国際大が世田谷に敗れると勝ち点差が7に広がり、2試合を残して優勝が決定する。