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 クラブW杯:広島1-2アルアハリ>◇9日◇豊田

 世界の壁は厚かった-。広島がアルアハリに敗れ、準決勝進出を逃した。前半32分、主将FW佐藤寿人(30)が一時同点に追いつくゴールを奪ったが、後半12分にエジプトのジダンことFWアブトリカ(34)に決勝点を献上。広島らしい攻撃的なサッカーは随所に展開したが、決定力を欠き、2点目を奪えなかった。12日の5位決定戦(豊田)は、蔚山と対戦する。

 しゃがみ込んだまま、しばらく動けなかった。FW佐藤は試合終了の笛が鳴ると、白い息を吐きながら、寒空から降り続ける雪をぼうぜんと見つめた。勝てばコリンチャンスとの準決勝が待っていたが、世界4強への壁は厚かった。

 「決めたことよりも勝てなかったことが悔しい。内容を見たら勝たなきゃいけない試合。来年ACLで勝つためには、こういう舞台でしっかりチャンスで決めないといけない」

 意地は見せた。前半32分、MFミキッチが頭で落としたボールをゴール右からダイレクトシュート。世界の舞台で初得点を決め、一時チームを同点へと導いた。だが後半36分には相手GKと1対1になりながら、わずかにゴール右に外し、同点を逃し、頭を抱えた。「駆け引きの中で狙いすぎた」。今季JリーグでMVPと得点王を獲得した抜群の決定力も、ここぞの場面ではかすんでしまった。

 それでも広島らしさは存分に発揮した。スピードで劣る相手DFラインの裏にロングボールを入れ、相手ゴールに迫り続けた。両サイドもワイドに使い、何度もチャンスを作った。シュート数はアルアハリの8本を上回る11本。ボール支配率も52%だった。だが決定力を欠いたことが、敗戦という結果につながった。

 森保監督は「チャンスで決めきれなかったのが勝てなかった原因。だが、サポーターに胸を張って振り返っていただける試合はできたと思う」と、淡々と振り返った。

 チームはこの2日間、初戦に続く新パフォーマンスを世界に発信しようと、練習の合間に全員で案を出し合い、プランを温めてきたが、披露することはできなかった。だが幸いにも、広島にはもう1試合が残されている。5位決定戦の相手は蔚山。佐藤は主将としての責任感を胸に「日本のプライドを見せて、最後は勝って終えたい」と、必勝を誓った。【福岡吉央】