異例のV宣言だった。横浜DF中沢佑二(33)が8日、東日本大震災で津波被害を受けた宮城・七ケ浜町を訪れ、サッカー教室を開いた。帰り際、ミニゲームなどで触れ合った150人の小中学生の前で「マリノスは今年優勝しますので、よろしくお願いします」と声高に言った。W杯を2度経験し、勝負の厳しさを知る男が、シーズン序盤に優勝を約束した。

 七ケ浜町に来たのは「タレント、スポーツ選手が行っていなくて、多くの方が避難しているところと考えて」。同町内のグラウンドは仮設住宅用地などになっており、サッカーをする場所がない。この日は、遺失物が保管されているグラウンドを特別に開放した。そこに日本サッカー界を代表する選手が来たとあって、子どもたちは大喜びだった。同町の斎藤颯良(そら)君(10)は「(優勝宣言に)びっくりしたけど、頑張ってほしい」と、マリノスファンではないものの、中沢の決意をしっかりと受け止めた。

 横浜は、5試合を終えて3勝2分けの勝ち点11で2位。予定外の優勝宣言をした中沢は「夢や希望を与えないと。子どもたちが見てることを考えると、下手な試合はできない。子どもたちからもらったエネルギーが背中を押してくれたと、(シーズンが)終わった時に思いたい」と、あらためて約束の重みを実感。04年以来のリーグ頂点へ-。無垢(むく)な心で信じる子どもたちを裏切れない。勝負師中沢が最大の重圧を背負って、優勝を現実のものにする。【今井恵太】