<J1:清水2-0名古屋>◇第28節◇2日◇アウスタ

 今季アウスタ最多の2万人が目撃した。これがエスパルスの目指すサッカーだ。清水が名古屋に8戦ぶりに勝った。初コンビのMFフレドリック・ユングベリ(34)とMF小野伸二(32)がダブル司令塔として機能すると、今季最多23本のシュートで攻め続け、FW大前元紀(21)、FWアレックス(27)のゴールを生んだ。数少ないピンチも、積極的な守備でゴールを割らせない。いつまでも見ていたいアフシン・ゴトビ監督(47)の采配にも、そんな実感がにじんでいた。

 この光景をいつまでも見ていたかったのかもしれない。ロスタイム表示の4分をオーバーし、後半が開始してから50分が経過した。長すぎるロスタイム。しかし、ベンチ前のゴトビ監督は穏やかな表情でピッチを見つめていた。司令塔にユングベリと小野を初めて並べて起用した。2人のベテランは衰えを知らないことをピッチで証明した。

 ゴトビ監督

 私が先発11人に満足していたからかもしれない。選手を代える理由は無かった。

 積極的に選手を交代してゲームを支配しようとするのが、ここまでのゴトビ采配だった。しかし、この日は後半45分になって、ようやく小野に代え枝村を投入した。行動派の指揮官をうっとりさせるほどの!?

 好ゲームだった。

 前半だけで13本のシュートを放ち圧倒した。後半に入っても優勢は変わらない。同28分、ユングベリが左サイドで起点になり、DF太田-FW高木とつなぎ、最後は大前が頭でねじ込み先制。大前は直前の決定機を逃がしていただけに「その前は『どフリー』でしたからね。最高です!」と、今季7号を喜んだ。

 リードを奪っても攻撃の手は緩めない。同39分、34歳になっても世界のセクシースターが魅せる。今度は右サイドで自ら出したパスを相手の後方で再び受ける「1人スルーパス」で突破しクロス。ニアサイドでアレックスが冷静に流し込み追加点を奪った。このプレーには敵将のストイコビッチ監督も「34歳のプレーには思えない。1人で全てやってしまった」と、移籍後初のフル出場を果たしたユングベリをたたえるしかなかった。

 アウスタには今季最多の2万181人が詰め掛けた。小野は「これだけの人が来てくれて、気持ちよくプレーできた」と、満足そうに振り返り、最後に一言付け加えた。「まだまだ始まり。もっと、もっと良くなる」と。【為田聡史】